大人になってからADHDと診断された女性について、小さい頃を知る周囲の人はこう述べます。
「あの子は勉強もよくできて、学級委員もするようなしっかりした子だったのよ。まさかADHDなんて」
「通知表にも何もそれらしいことが書かれていないし」
ADHDといえば、一昔前まで授業に集中できず教室を歩き回って、高い所から飛び降りるなど活発で友達にちょっかいを出すようなイメージでした。
こうした行動が起こると、教室では「授業妨害」「けが」「他人への乱暴」という形で現れ、教師としては対処を余儀なくされます。
児童期にADHDと診断される男児は、女児の約2倍に上ると言われます。しかし、成人期には性差はなくなります。これは「子どもの頃に、女児のADHDが見過ごされているからではないか」と言われています。というのも、ADHD診断の基準が男性の行動様式を基準に作られているからではないかという批判が寄せられているのです。
例えば、大人になってからADHDと診断された女性の多くがこう言います。
「授業中は、席を立ったりしませんでした。その代わり、ずっと空想して暇をつぶしていました。頭の中でいろんな物語を考えたり、ノートや教科書に落書きしたり…」
男児が行動上の「多動」を発現している間に、女児は頭の中でぐるぐると想像を巡らせ、ペンを走らせるといった形で多動を発現しているのです。頭の中の多動は目立ちにくく、周囲に迷惑を掛けないので注目されません。これで成績が良いとなると、完全に見過ごされます。
頭の中だけでなく、多弁という形で多動が出る女児もたくさんいます。大人になると、一緒に旅行に行くとやたら予定を詰め込んでパンパンにする人がいます。あれも多動の一形態ですし、SNSを頻繁にアップするのもそうでしょう。
女児のADHDがいないか、教室を見渡してみてください。早期発見は、女児に「だらしない」「不真面目だ」などの悪い自己レッテルを貼るのを阻止する一助となります。