第3回 子どもの睡眠とADHD

第3回 子どもの睡眠とADHD
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 最近の子どもたちを取り巻く環境はちょっと変化しています。

 ゲーム、スマホなどによる睡眠不足の問題です。子どもの睡眠時間は年々減ってきています。特に日本の子どもの睡眠不足は世界的にも際立っていることは周知の事実です。睡眠が子どもの発達を阻害すること、肥満のリスク、心への影響も分かっています。

 ここに私はADHDの専門家として、もう一つ加えたいことがあります。ADHDの子ども(大人もそうです!)にとって、睡眠は他の子どもよりもさらに大事だということです。というのも、ADHDの大きな特徴は脳の実行機能と呼ばれる、いわゆる「計画立て」に関する高度な働きがうまくいっていないことにあると言われているのです。料理の段取り、夏休みの宿題の計画、大掃除の手順、試験勉強など、私たちの日常には計画立てに関連するものがたくさんあります。

 ADHDの人は計画立てが苦手ですし、何かを実行しながらも他のことに気がとられやすく、優先順位をつけられず、あれもこれもやみくもに手を出してしまいがちです。この実行機能は、生後すぐには未成熟な状態で完成しておらず、成人期早期までかけていろんな経験を基にして発達すると言われています。例えば、「夏休みの宿題って、最後の日にすると泣きを見るんだな」と分かれば、翌年は少し早くとりかかろうとするかもしれません。

 宿題を先延ばしてゲームをしながら「ああ、ずっと心にひっかかるなあ。これは宿題をさっさと済ませた方が幸せかもしれない」と気付くのも実行機能を成長させる良い経験です。こうしてゆっくり成長を遂げる実行機能は、前頭前野と呼ばれる部分の幾つかの部位を連動させて成りうる、非常に高度な脳の働きです。そのため、良質な睡眠でしっかりと脳を休ませたり成長させたりしないと、実行機能が育つ時期を逃してしまうのです。ADHDの子どもたちは、ただでさえ実行機能の成長が遅いと言われていますから、しっかりと寝て脳の機能がフル活用できるコンディションを整えてほしいと考えます(さらに欲を言えば、そこに周りの大人から実行機能を伸ばすための働き掛けが必要です。それはまた次回以降に書きます)。

 まずは、土台を整えるためにも、とにかく子どもはたくさん寝させましょう。しかし、「ゲームばかりして寝ないんですよ」という声も、多くの保護者から聞きます。次回は子どもとゲームやスマホについて解説します。

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