第7回 必要な物をなくしてしまう

第7回 必要な物をなくしてしまう
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 ADHD傾向にある子どもの特徴の一つに「物をなくす」があります。はさみ、ハンカチ、大事な書類…。これが社会人になると、通帳、印鑑、パスポート、年金手帳に保険証…と、なかなかやっかいな問題になります。もし、会社の重要書類を紛失すれば、大問題になるでしょう。

 この「物がなくなる」プロセスには、不注意が関連しています。例えば、子どもの大好きなゲームが宅配便で家に届いたとしましょう。待ちに待った新作のゲームですから、子どもはすぐに開封して遊びたいわけです。はさみを持って来て、ダンボール箱を開けて、すぐにゲームを始めます。

 この時、ほとんどの子どもが使ったはさみをどこかその辺にぽいっと投げ捨て、ゲームに飛びつくことでしょう。ダンボールや紙のケースの下になったはさみは、あっという間に視界から消えます。そうしていったん視界から消えると、ADHD傾向にある子どもたちは、はさみの存在自体を忘れてしまいます。当然、はさみを元の場所に戻すことなど忘れて長時間ゲームに没頭するでしょう。

 その上からさらに、お菓子の袋や封書などの書類が幾重にも重なるような家庭だったとしたら、(子どもと同じく保護者もその傾向がある確率は非常に高いのです。ADHDに関連するさまざまな要因のうち遺伝で説明できる割合は約80%と言われます)、確実にはさみはなくなるでしょう。

 では、どうしたらよいのでしょうか。「使ったら元に戻す」という王道のルールが守れれば苦労はしません。一応、提示してみる価値はありますが、あまり期待してはいけません。それよりも、なくさない「仕組み」を本人と一緒に考えるのです。

 「はさみってよくなくしちゃうよね。そもそもはさみをよく使う場所と、収納場所が離れているからいけないんじゃないかな。だから元に戻しづらいんじゃないかな」

 こんなヒントを与えながら、「はさみの定位置」を一緒に決めていくのです。

「宅配便の箱を開けるのは、たいていテレビ前のこの位置だから、テレビボードの引き出しにはさみがあると便利かな。いや、引き出しをわざわざ開けて使うのは面倒だし、戻せる気がしないから、テレビ台の上にはさみを立てておくペン立てを置こう」

 「それじゃあ、僕は新しい服のタグを切るときにクローゼットの前にはさみがあったらいいな」

 「私は学校のプリントの切り取り線を切るときに使うからテーブルの近く」

 こんな感じでアイデアを出し合うのです。はさみは何本か使う場所ごとにそろえます。こうした発想は一生使えます。

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