医療的ケア児の支援においては、現在の支援と同時に次のステージを見据えた準備も同時に行うことが求められる。そのため、筆者が開催してきた多職種連携の会「しゃんしゃん育ちの会」では、各ステージに移行する2年前から準備を開始することの重要性を確認し合っている。以下、各ステージの特徴について述べる。
医療的ケアが必要な子どもや障害のある子どもは、生後すぐに治療が必要な場合が多く、両親は心理的に混乱した状態で告知を受ける。この体験は両親の育児体験の中で大きな節目(crisis period)となっている。医療職からどのような説明が行われたのかは、その後の親の受け止めや理解に大きく影響する。また、出生直後から親子の分離期間があるため、親子の関係形成が阻害されやすい。
乳児期は医療機関との密接なつながりが求められるほか、家族は育児やケアへの適応が必要である。首すわり、寝返り、歩行など運動発達の著しい時期であり、リハビリなどとの連携が大切な援助となる。さらに、障害や病名確定前は希望する福祉サービスを受けにくく、今後を見据えた体制づくりが早期から必要である。学齢期以降、ヒアリングなどを通じて乳児期の状況を理解することが子どもの全体像をアセスメントするのに役立つ。主治医や保健師、訪問看護師、療育機関の支援者などの情報を活用できる。
療育機関や保育所・幼稚園に通い始めることで、生活に一定のリズムができ、体調を崩す機会が減ってくる場合もある。一方、運動の機能訓練に力が注がれる一方で、呼吸状態の悪化や摂食・嚥下(えんげ)障害が重症化し、気管切開や胃ろう造設などの新たな医療ケアを導入せざるを得ない場合もある。重度重複疾患を抱えている場合は、複数の診療科や医療機関の受診、遠方の療育機関への長距離移動などを余儀なくされ、家族が疲労困憊している姿も見受けられる。そのため、居宅型の児童発達支援など、地域包括ケアの体制づくりが進められている。また、支援機関が複数にわたるため、情報共有や連携も課題である。地域の療育機関や通園事業、保育所などでの集団生活が始まる時期だが、体調不良や感染のリスクがある場合などは参加を諦めている親もいる。専門職とつながることは母親のレジリエンスを高める契機となり、母親が身体的・精神的に癒されたり、親子の関係性を深めたり、支援活用の方策を獲得できたりするような支援が求められる。
学齢期前に、子どもの社会化に向けて、ゆっくり時間をかけて分離を進める支援も重要である。急な分離は親子相互に影響を与えるため、焦らずに関わることが求められる。