新潟大学大学院保健学研究科准教授
医療機関とは異なる環境で、他職種と協働しながらケアに当たる看護師は、医療的ケアの実施に限らず多様な役割が求められている。これらの社会的ニーズに応える上で、文部科学省は指導的な役割を担う看護師の育成と配置を喫緊の課題として挙げている。
医療的ケア児の増加に伴い、学校でケアを担う学校看護師の役割の明確化や体制づくりが課題になっている。一方で、学校看護師については高い離職率、人材不足が報告されている。離職理由には、①労働雇用条件への不満②人間関係③教諭との連携④家庭生活とのバランス⑤看護師としてのやりがいや満足⑥学校での看護が分からない⑦子どもをケアすることへの不安⑧病院と異なる看護実践⑨精神的負担――などが挙げられている。
交流学級や共同学習の重要性は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」に基づき、2024年4月1日より施行された「文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」においても示されている。
医療的ケア児支援法は、保育所や学校への看護師の配置、支援拠点の設置などの対応を国や自治体の責務とした。また、家族の離職の防止に資することも目的の一つとしている。障がい児の親は築いていたキャリアを手放し、就労を諦めざるを得ない実情がある。しかし、就労の機会を得ることを願っている親は多く、2020年の実態調査では、希望する形態で仕事に就きたいと回答した親は88%だった。しかし、実際にそれが行えているのは7.0%で、ケアを担う親の就労が非常に困難であることが分かる。
前回述べたように、障がい児を育てる母親にとって、「育児の喜びや意欲を見いだす体験」は、育児への意欲を高め、育児の方策を見いだす上で重要である。子どもが笑ったことや反応を読み取ったときの感動、親にしかできないことを発見したときの感激は、母親の育児の支えとなっている。
筆者が行った研究では、学齢期の重症心身障害児を育てる母親が「子どもが成長する姿を捉える体験」は、最も生き生きと語られる内容の一つであり、重要な意味を持っていた。この体験は、学校の先生方との関わりを中心に語られることが非常に多い。
高齢者の医療的ケアと異なり、小児の医療的ケアは成長に伴い終了する場合がある。しかし、医療的ケアを卒業しても、日常的な観察やケアの必要性は続く。
医療的ケア児の支援においては、現在の支援と同時に次のステージを見据えた準備も同時に行うことが求められる。そのため、筆者が開催してきた多職種連携の会「しゃんしゃん育ちの会」では、各ステージに移行する2年前から準備を開始することの重要性を確認し合っている。以下、各ステージの特徴について述べる。
2021年6月「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)」が参議院本会議にて全会一致で可決・成立した。この法律は、医療的ケア児を育てる家族の負担を軽減し、医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離職を防止することを目的とし、子どもだけではなく家族にも着目されている。
近年、医療技術の進歩と地域包括ケア体制の整備により、人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童生徒(以下、医療的ケア児)が増加している。医療的ケア児は、2016年の児童福祉法一部改正で法律上初めて定義付けられ、支援体制の整備が地方公共団体の努力義務とされた。
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