教職員の懲戒処分のニュースが後を絶たない。教員の非違行為には、体罰、セクシュアルハラスメント、公金・公物の横領、無届欠勤、個人情報の不適切な取り扱い、職場のコンピューターの不正利用、交通事故、傷害・暴行、強要・脅迫、無許可の兼業・兼職その他がある。教職員の服務規程について、その内容について具体的に理解しておくことが大切である。
まず、日本国憲法第15条では、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と定め、第99条では「公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」としている。これらの規定を受けて、地方公務員法は、第30条から第38条まで服務について定めている。第30条では「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」とし、「全体の奉仕者」「公共の利益のために勤務」、職務専念の義務を定めている。
第31条以下はそれぞれ、服務の宣誓、法令および上司の職務上の命令に従う義務、信用失墜行為の禁止、秘密を守る義務、職務に専念する義務、政治的行為の制限、争議行為等の禁止、営利企業への従事等の制限について定めている。服務の宣誓については、採用する自治体は職員の服務の宣誓に関する条例を定めており、宣誓書に署名して任命権者に提出してからでなければ、職務を行ってはならないと定めている。
第34条の秘密を守る義務について、学校における秘密の例として、児童生徒の家庭環境調書や健康診断に関する表簿、指導要録、出席簿、入学者の選抜に関する表簿、発表前の入学試験の合否や卒業・進級の判定などがある。特に学習評価の業務において扱うことの多い児童生徒の成績などのデータは慎重に取り扱う必要がある。また、学校の教職員の懇親会などにおいて、個人情報や学校運営上漏らしてはいけない事項についての会話は避けるよう、十分注意する必要がある。
政治的行為の制限については、教育公務員特例法第18条では、この地方公務員法の規定にかかわらず、国家公務員の例によると定め、政治的行為の制限を国家公務員と同様とするとしている。
地方公務員法第38条の営利企業への従事制限については、「自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない」としている。例えば、親から相続した空き地で一定規模の駐車場を経営したり、土日に塾を経営したりすることは営利企業を営むことに当たると考えられる。一方、教育公務員特例法の第17条で教育公務員は、本務に支障がないと任命権者が認める場合は、教育に関する兼職・兼業に従事できるとしている。教育の専門性を生かせる職には、大学やカルチャーセンターなどの非常勤講師、講演会の講師、教科書や参考書、問題集の執筆・編集などが想定される。
教育委員会においては学校教職員の兼職や兼業に関する取り扱い規程を設けている場合があり、まずは、その内容を確認しておく必要がある。