第8回 普通学級との交流授業について

第8回 普通学級との交流授業について
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 交流学級や共同学習の重要性は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」に基づき、2024年4月1日より施行された「文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」においても示されている。

 Fさんの子どもは特別支援学校の1年生から、居住地域の小学校と年に3回、交流学級を行っている。「交流するなら早いうちから」と担任の先生に勧められた。子どもは、肢体不自由と重度知的障害、難聴、視覚障害、医療的ケアがあり、意思疎通は難しいが、Fさんは「障がい児は一人一人違うことを分かってほしい。同じ学年の仲間として関わってほしい」と、学校側に親の思いを伝えていた。

 通常学級の担任の先生は「困っている事があったら助けてあげましょう」と児童に伝えていた。最初の頃はお互い緊張して固まっていた様子だったが、次第に児童たちが周りに集まり、声を掛けてくれたり新聞紙を自由に扱うテーマの授業で王冠を作ってくれたりした。「○ちゃんは指先が動くから、今度は粘土みたいなものがいいと思う」と提案した児童がいた。また、背中を触って「○ちゃんが低体温になってない?」と聞いてくる児童もいた。Fさんは、「同級生がよく見て、関わり方を考えてくれているのがうれしかった」という。

 特別支援学校の担任の先生は、「先生の普段からのクラス運営が反映されている」と興奮した様子でFさんに教えてくれた。この交流が新聞に取り上げられ、全校生徒や地域の保護者、特別支援学校の保護者も目にした。周囲の親から「困った事があったら声を掛けて」と言われたり、特別支援学校の保護者から「自分の子どもも交流をしてみたい」という声が上がったりした。Fさんは「授業以外でも得た喜びがたくさんありました」と語る。

 また、Gさんは障がいのある子どものきょうだいの担任が、「今日は、特別支援学校から交流級に来る○○さんがいるので、会ったらあいさつをしましょう」と皆に教えてくれたことで、きょうだいもうれしくなったと話していた。

 障がいのある人は、時に「異邦人のように見られる」ことがある。「障がい者は別な人間」という考えが背景にあるのかもしれない。しかし、人はいつか障がい者になるかもしれないという人生の連続性を有している。

 近年、脳科学分野でミラー細胞(mirror neuron)という、見聞きしたことが自分においても同じ反応を引き起こす細胞が発見されている。この細胞によって相手の痛いことを自分の痛みとして無意識に感じるように、自分と他人の連続性を学習することは、人間が共に生きていく上で大切な脳機能であると考える。

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