医療機関とは異なる環境で、他職種と協働しながらケアに当たる看護師は、医療的ケアの実施に限らず多様な役割が求められている。これらの社会的ニーズに応える上で、文部科学省は指導的な役割を担う看護師の育成と配置を喫緊の課題として挙げている。
2024年3月、医療的ケア児の保護者が学校行事などで付き添いを求められて負担となるケースがあるとして、総務省が文科省に対し状況改善などを求める通知を出した。総務省行政評価局が23年12月から24年3月にかけて全国32市区町村の小学校を調査をしたところ、校外学習や宿泊学習などに保護者が付き添いを求められたケースが約半数に上っていた。理由として、代わりに勤務する看護師を確保できなかったことなどが挙げられている。
課題解決の方策として、①チームアプローチによる支援システムの強化②研修体制の強化③地域包括ケアの活用と看看連携(訪問看護と学校看護師の連携)④キャリア支援――が挙げられる。先進地域では、個別の医療的ケアの内容・範囲を主治医や指導的役割の看護師に確認し、指導・助言を受けられる体制づくりが行われている。日常的に医療的ケア児と関わっている看護職やリハビリ、地域支援機関と意見交換の場を持つことで、多様な専門職との切れ目のない連携が行われることが期待される。一方、子どもに常時見守りが必要な場合は看護師を配置し、一定の時間帯のみ必要な場合は訪問看護ステーションから派遣を受けている学校もある。
保護者のHさんは居住している市が23年から開始した巡回看護師の対応に注目し、看護師が複数人体制でパーソナルな支援を行うことに「子どもも親も慣れてくることで、いろんな人からケアを受ける力が育つ」と期待している。また、導尿の医療的ケアが必要な男の子を育てるIさんは、「学年が上がるにつれて恥ずかしい気持ちが出てきて、できれば男性看護師からケアを受けたい」と考えているため、学校では訪問看護ステーションへの委託を検討し始めている。
学校看護師は、主治医や医療機関とも連携し、子どものセルフケアを担任と共に支援し始めている。地域包括ケアとは、「住み慣れた地域でその有する能力に応じて自立した生活を続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される」という考え方で、高齢者だけでなく子どもについても重要な視点である。子どもの場合は発達段階に応じた関係教育機関、親の就労と関係する企業も含めた幅広いシステムの構築が求められる。
地域によって実情は異なっているため、各地域に応じた取り組みを進め、ご当地システムがつくられることが重要である。また、各専門職は数少ない子どもへの支援経験を蓄積していくことが期待される。(おわり)