8月になり、今夏の教採試験も佳境を迎えている。2次試験の直前対策として、「いじめ」に関する基礎的な理解をすることの重要性を再確認しておこう。
「いじめ」は相変わらず学校現場の生徒指導上における最大の課題である。従って、教採試験においても、筆記試験をはじめ論作文、面接、場面指導などあらゆる場面において取り上げられ、課題解決に向けての考え方や対策案などが問われている。回答などを考える際には、「いじめ」問題についての基礎的な理解が必要となってくる。改めて、「いじめ」についての基礎的な理解を図ることとしよう。
文部科学省から毎年、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果が発表されている。いじめをはじめ、暴力行為、出席停止、長期欠席(不登校)などの実態を明らかにしたものである。これにより、問題行動などの動向、実態を把握しておくとよい。
特に重要なのは、全国的なレベルだけではなく受験する自治体の実態に目を向け把握しておくことだ。ひと口に問題行動と言っても、地域によって特徴がある。対策案などを回答する際は、その地域の実態を基に考えられたものの方が信ぴょう性が高く、採点官や面接官からも「この志望者よく勉強している」と評価される。なお、いじめは「認知件数」(2005年度までは発生件数)と言っているので間違えのないようにする。
「いじめ防止対策推進法」(以下、推進法)が13年に施行されている。同法および国の「いじめの防止等のための基本的な方針」などは必ず目を通し、ポイントは押さえておく。
推進法では、いじめを「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の(人的)関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の(苦痛)を感じているもの」と定義している。この定義に基づいて考えていかなくてはならない。
推進法の制定により、学校および学校の教職員に、いじめの防止(・早期発見)・対処の責務が明確にされた。これを怠ることは法律違反となる。いじめの未然防止のための取り組みを着実に遂行することが求められている。
推進法第15条には、いじめ防止のために、「児童等の豊かな(情操)と道徳心を培い、心の通う対人交流の能力の素地を養う」よう、「道徳教育及び(体験)活動等の充実を図らなければならない」と定められている。
対策を進める上で重視しなくてはならないのは「組織対応」である。優れた学級担任の教師といえども、取り組みには限界があり、一人で何もかもできるわけではない。いじめの徴候を把握したり、児童生徒からの訴えを取り上げたりしなくてはならない。このような場合、まずは同学年の教師に知らせて相談することである。さらに管理職にも相談が必要である。
学校で設けている、いじめの防止の基本方針やいじめに対応するための校内組織をよく理解して、組織対応を進めることが重要である。
いじめを早期発見するためには、児童生徒一人一人に関心を持ち、「小さなサイン」を見逃さないことである。
また、「あの先生になら相談できる」という児童生徒との人間関係を確立したい。
情報収集にはアンケートの実施も重要である。推進法第16条ではアンケートなど定期的な調査が義務付けられている。アンケートの回答を本人の意思表示とするなら、アンケートの実施は早期発見につながるだろう。実施に当たっては、答えやすい設問の工夫、安心して答えられる環境の整備が必要だ。結果については、活用、保存などについて十分な配慮が必要となる。
情報収集については、教職員、児童生徒、保護者、地域などからの情報も重視する。日頃の連携・協働の機会を大切にしたい。
具体的なものとして3点を挙げておく。
(1)速やかな早期対応の三原則
いじめの疑いが把握された場合、「被害者保護最優先」「組織対応」「緊密な保護者連携」という三原則を厳守する必要がある。
(2)事実確認と報告
推進法第23条には、速やかな事実確認と設置者への報告の他、複数の教職員および心理、福祉などの専門家による、被害児童生徒・保護者への支援などが定められている。
(3)重大事態への対処
いじめにより児童生徒の生命・心身・財産に重大な被害が生じた疑いがある、または相当の期間(おおむね1カ月程度)欠席することを余儀なくされている場合は、「重大事態」として対処しなくてはならない。