児童生徒の健康の保持と増進は安全の確保と並んで、教育活動の前提となるべき事柄である。各学校には養護教諭が配置され保健室が設けられ、計画的に児童生徒および職員の健康の維持管理が進められている。学校保健の基本的事項を定めたものが、学校保健安全法である。各学校では、保健管理、保健教育、組織活動といった区分に基づき、1年間の学校保健計画を作成している。この計画の作成と実施については学校保健安全法の第5条で規定されている。
保健管理とは、健康診断や健康調査の計画を立てたり採光や換気の基準を満たしているか確認したり、疾病予防の計画を立てたりすることを含む。保健教育とは、理科や体育、家庭、特別活動などにおいて健康に関わる学習を行うことである。組織活動とは校内の保健委員会などでの活動や保護者との連携などが挙げられる。健康診断については、就学時の健康診断、毎学年定期的に行う健康診断、職員の健康診断について定めている(第11条~第17条)。
児童生徒の健康診断を担当する学校医、学校歯科医、および学校薬剤師については、この法律の第23条で各学校に置くことが明記されている。
学校生活に関わる教室の換気や採光、照明、保温その他の環境に関わる基準は文科省が定め、学校の設置者(公立学校の場合は教育委員会)はこの学校環境衛生基準に照らして、適切な環境の維持に努めるとされている。
なお、感染症予防としての児童生徒の出席停止は校長が、臨時休業は設置者が行うこととされている(第19条・第20条)。
学校安全については、学校保健安全法第27条で、各学校は、学校施設や設備の安全点検、通学およびび学校生活などにおける安全指導、職員研修などを含む学校安全計画を策定することを定めている。学校保健計画と同様、安全管理、安全教育、組織活動の3つの区分ごとに1年間の計画が作成されている。
安全管理には、通学路の安全確認、諸設備や校舎内の安全確認、危険箇所の点検・整備、防災用具の点検などが、安全教育には、各教科などの授業で行われる安全に関わる学習、交通安全教室や避難訓練などが含まれる。組織活動は、学校安全委員会の活動、地域と連携した安全確保の活動などがある。
第29条では、危険などの発生時に適切な対処が行えるよう、当該学校の職員が取るべき措置の具体的内容および手順を定めた対処要領(危機管理マニュアル)を作成するとしている。文科省は『学校の危機管理マニュアル作成の手引』を作成している。その構成は、事前の危機管理と個別危機管理、事後の危機管理となっており、事故発生時の対処・連絡体制を例示するとともに、不審者侵入、登下校時の緊急事態、交通事故、地震・津波などへの対処の在り方を示している。
学習指導要領における健康・安全に関する指導の記述についても確認しておきたい。総則の「2」の「(3)」において、安全に関する指導、心身の健康の保持増進に関する指導は、各教科等の特質に応じて適切に行うと記しており、学校保健計画、学校安全計画と連携した学習が求められている。