【教採キーワード―調べ確認してみよう(11)】学習指導要領の法的位置付けと役割

【教採キーワード―調べ確認してみよう(11)】学習指導要領の法的位置付けと役割
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 学習指導要領の目次の前に、「文部科学省告示」として文科相の名前で、学習指導要領の改正と施行の年月日が記されている。学習指導要領はどのような法令上の根拠に基づいて改正、施行されているのであろうか。

学習指導要領の法的位置付け

 学校教育法第33条では、「小学校の教育課程に関する事項は、第29条及び第30条の規定に従い、文部科学大臣が定める」としている。第29条では小学校の目的を、第30条では「基礎的な知識及び技能」「思考力、判断力、表現力その他の能力」「主体的に学習に取り組む態度」を養うことに「特に意を用いなければならない」ことを明記している。「文部科学大臣が定める」とは、立法機関である国会が法律で定めるのではなく、法律の委任を受けた行政機関が規則などで定めることを指している。

 この規定を受けて、学校教育法施行規則では、各学校で編成する際の基礎的な条件となる教科等の種類と授業時数(標準)を示している。小学校については、第50条と別表第一、中学校については第72条と別表第二である。さらに、授業を行う日を決める際の前提となる学年の終始の時期、公立学校の休業日についても第59条と第61条で規定している。

 教育課程を編成する際には、これらの条件以外に各教科の目標や内容などが必要である。このことについて、第52条で次のように定めている。

 「小学校の教育課程については、この節に定めるもののほか、教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する小学校学習指導要領によるものとする」。

 学校教育法施行規則では、教育課程編成の基礎的な枠組み、条件を定め、各教科などの目標や内容等は学習指導要領で示すことを意味している。また、学習指導要領は各学校が編成する教育課程の基準であることが示されている。以上をさかのぼると、学習指導要領→学校教育法施行規則→学校教育法の順にその根拠を持つことが分かる。

学習指導要領の役割

 教育課程の基準としての学習指導要領の役割はどこにあるのであろうか。このことについて、2017(平成29)年告示学習指導要領(小学校・中学校)の「前文」に次のように記されている。

 「学習指導要領が果たす役割の一つは、公の性質を有する学校における教育水準を全国的に確保することである。また、各学校がその特色を生かして創意工夫を重ね、………学習指導要領を踏まえた教育活動のさらなる充実を図っていくことも重要である」。

 学習指導要領の各教科等において示す内容はいずれの学校においても取り扱うことが求められており、この学習指導要領の性格によって「教育水準を全国的に確保」することが可能になる。全国どこの学校においても、学習指導要領に示す事項は指導されており、教科書の使用と相まって全国的な教育水準の維持に寄与している。

 一方、学校の判断で学習指導要領に示していない内容を加えて指導することも可能としている。これらのことから、学習指導要領は各学校の教育課程編成の基準としての役割とともに、学校の判断で創意工夫を可能する大綱的な性格を持っている。

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