生徒指導関連の課題で、重要なものに児童虐待がある。近年、増加の一途をたどり、家庭の問題ではあるが、教採試験の面接などではよく取り上げられる。基本的な理解をするとともに、自分なりの考えを持っておく必要がある。
「児童虐待」「小学校の暴力行為」「家庭内暴力」「自殺」など生徒指導上の重要な課題は、ここ数年急増している。中でも児童虐待については、2000(平成12)年、初期介入の強化に主眼をおいた児童虐待防止法が制定されたが、児童相談所の相談受け付け数は増加の一途で、23(令和5)年には約22万3000件で過去最多となっている。
児童虐待は、殴る蹴るなどの暴力をふるう「身体的虐待」、性的な行為を強要する「性的虐待」、大声で脅したり、拒否的態度をとったりする「心理的虐待」、食事を与えないなど面倒をみない「ネグレクト」の4つに分類されるので、この4類型を押さえておく。心理的虐待が最も多く、身体的虐待、ネグレクトがこれに続く。性的虐待は全体に占める割合は高くはないが、深刻であることに違いはない。
学校の役割・責務はどうか。児童虐待防止法第5条では、学校の教職員に対して、「児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない」と規定している。また、同法第6条第1項では、「速やかに……福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない」とされている。この通告は「虐待を受けたと思われる」時点ですることになっている。
教職員には「小さなサインに大きな問題」という認識が求められる。一人一人の児童生徒への関心を深め、児童生徒が発する小さなサインに鋭敏に気付く感性が必要となろう。
なお、刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、「……通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない」(同法第6条第3項)と定められているので、確実に虐待があったと確認してからではなく、「虐待を受けたと思われる」段階で迅速に対応しなければならない。
学校は、児童生徒・保護者に対する虐待防止のための教育・啓発、教職員研修の充実、児童生徒の援助希求力の向上、教育相談体制の整備などに努めるとともに、関係機関などと緊密な連携協働を進める必要がある。このため、各地域で援助を必要とする児童らの相談支援などに当たっている児童委員をはじめ、児童相談所、警察、児童福祉施設などとの日頃からの連携が大切となる。虐待を受けたと思われる児童の発見者による、直接通告または児童委員を介した間接通告は義務とされているが、学校現場においては、教員独自の判断で通告を行うのではなく、組織的に対応しなくてはならない。
さらに、04(平成16)年の児童福祉法改正の折に、関係機関の情報共有・連携強化を目指して設置が提唱された「要保護児童対策地域協議会への積極的な参加」が重要である。
個々の教員においては、家に帰りたがらないなど「小さなサイン」から、虐待被害という「大きな問題」を感じ取ってもらいたい。何より大切なのは、管理職への「速やかな報告」であることを忘れないようにすることが大事だ。