GIGAスクール構想によりICT機器に堪能な若手教師を中心に活用を推進している学校が多いだろう。若手教師は「デジタルネーティブ」と言われ、生まれた時からデジタル機器に囲まれてきた世代である。ICT機器を違和感なしに使いこなすという特徴を持つ。
(一財)教育調査研究所の機関誌『教育展望』7・8月合併号収載の「デジタル社会において人間の教育の本質を問い直す」(お茶の水女子大学・冨士原紀絵教授)では、『教育効果を可視化する学習科学』(ジョン・ハッティ、グレゴリー・イエーツ共著、北大路書房)を取り上げ、「現状での人間の脳内の『情報処理の構造』は、いくらICT機器の操作に慣れたところで変化はしておらず『電子社会とかかわる経験は(人間の)生来の認知能力を高めるという考えは重大な誤り』」としている。
「『複雑なツールを使ってすばらしい作品を創出すること』や一度にたくさんの情報を入手することを、決して『知識や理解の深さ』と同義に見なしてはならず、両者を峻別する必要性」を示している。
今年度の全国学力・学習状況調査から、多くの児童生徒が授業でのICT機器活用を肯定的に捉えていることが分かる。しかし、学校質問調査の「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善の取組状況」の11ある質問項目について「そう思う」と回答した学校は、全項目とも2割前後である。
今、ベテランの教師のこれまでの実践の知見と若手のICT活用力を融合させて、真に子どもの深い学びを実現することが求められている。