第10回 共同エージェンシーの光が照らすこれからの学習パートナーシップ

第10回 共同エージェンシーの光が照らすこれからの学習パートナーシップ
【協賛企画】
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 エージェンシーの視点からこれからの学校教育を考える上で、「OECDラーニング・コンパス2030」からの大事な提起がもう一つあります。それは、子どもたち・若者たちと大人たちが互いにエージェンシーを育み合い、発揮し合う「共同エージェンシー」という考え方です。このアイデアは、「OECD Education 2030プロジェクト」の生徒グループの対話から生み出され、「共同エージェンシーの太陽モデル」(図左)として提起されています。

共同エージェンシーの太陽モデル(OECD,2019)と若者たちの参画のはしご(Hart,1997)
共同エージェンシーの太陽モデル(OECD,2019)と若者たちの参画のはしご(Hart,1997)

 このモデルは、子どもの発達と環境デザインの研究者ロジャー・ハートが提唱した「参画のはしごモデル」(図右)をベースにしています。具体的に、子どもたち・若者たちがはしごを登るように段階的にエージェンシーを発揮すると想定するのではなく、子どもたち・若者たちが大人たちとの関係の質に応じながらエージェンシーを発揮する(あるいはしない、できない)ことを表現しています。

 太陽モデルに、はしごモデルにないゼロレベルがあるのは、1つには社会や政治の仕組みによって若者たちが活動への参画さえ許されない「沈黙」を強いられる状況が実際にあるため、2つにはゼロ以外のレベルであれば子どもたち・若者たちがエージェンシーを発揮するチャンスが開かれることを訴えているためです。

 はしごモデルと同じく太陽モデルでもレベル1から3までは、大人側の子どもたち・若者たちへの関わり方に厳しい文言が当てられています。レベル1では大人たちが子どもたち・若者たちを操り、レベル2では大人たちが子どもたち・若者たちを利用し、レベル3では形だけの平等を大人たちが見せかける、となっています。その後、レベル4以降は次第に、子どもたち・若者たちと大人たちの関係が対等になっていきます。

 「OECDラーニング・コンパス2030」における「共同エージェンシーの太陽モデル」のタイトル下部には次の文章が添えられています。

 

光は、私たちがともに輝くときに最も鮮やかになる

The light is brightest when we shine together

 

 学校教育を通じて子どもたちとエージェンシーを育み合い、発揮し合うために、今こそ私たちは子どもたちと教師たち・大人たちの学習パートナーシップを見直すときなのです。さあ、子どもたちと一緒に、私たちのウェルビーイングに向かって歩み始めましょう。(おわり)

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