第8回 大人と子どもの応答関係

第8回 大人と子どもの応答関係
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 子どもの権利条約には、世界中の全ての国や地域の子どもたちと、その個々の属性(人種、言語、文化、宗教、障害、社会的養護など)がどうであっても、その子たちの権利を守るために大切にすることが書かれています。

 ユニセフによると、子どもの権利条約は、①差別の禁止②子どもの最善の利益③生命、生存及び発達に関する権利④子どもの意見の尊重――の「4つの原則」を子どもの権利の実現を考えるときには大切にしないとならない、と掲げています。まず命があり、それは生活している環境に左右されることがなく、子どもの意見が十分に考慮された形で、子どもにとって一番いいことを考える、という意味にも取れます。(注:筆者の解釈です)

 前回、「意見」とは「その子の態度やしぐさも含まれる」とお伝えしました。その子の後ろ側に広がっている景色を想像して行動の理由を考えるからこそ、真のニーズの実現につながり、そういう大人側の態度が子どもにとって最も良いことにつながっていくのです。

 学校で子どもが暴れているとき、他の子どもの安全を考慮してその子を押さえ付けることがあります。以前、子どもが蹴り上げた机が宙を舞い、別の机の上に乗った場面を見たことがあります。子どもは時に驚異的な力を見せることがあるので、他の子の安全という観点から押さえ付けるという選択を取らざるを得ないこともあるのでしょう。

 しかし、もし暴れている背景に家庭内での児童虐待やネグレクトが潜んでいるとしたら、「押さえ付ける」という行為が家庭内でのトラウマ的体験の再現につながってしまいます。目に見えるけがをしていなくても、不適切養育につながっている子どもがいる可能性があるのです。

 以前、学校で暴れてしまう子どもがいました。担任がその子の気持ちを推測して関わる中で、ある時、その子が不適切養育にあることを教えてくれました。その後、不適切養育から守られたその子は、暴れるという「意見表出」からコミュニケーション方法が変わり、その結果、今までその子を敬遠していた周りの子どもたちとの関係も深まり、落ち着いた学校生活を送れるようになったのです。

 担任がそのような応答関係を続けてくれたおかげで、その子が重大な権利侵害から守られ、他の子の権利も守られたのです。

 日常的な子どもとの応答関係をつくることは、子どもの権利擁護の第一歩です。その結果、問題行動と呼ばれる行為の減少にもつながっていくのではないでしょうか。

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