第10回 全ての人が学校で包摂されるためには…

第10回 全ての人が学校で包摂されるためには…
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 ここ数年、児童生徒が抱える複雑・多様な課題への認知が進み、さまざまな側面から法や仕組みが整備され、たくさんの子どもが学校で包摂されるような仕組みがつくられています。子どもの権利条約の精神に近づけようとする努力とも感じます。

 一方、教員の離職者・休職者が年々増え続けており、子どもを包摂する枠組みがつくられても、学校は持続的に運営をしていくことの根本的な困難さを抱えています。

 さまざまな法律の下で提供される子どもへの支援に、国からの経済的な支援があるわけではなく、教職員の努力で行わなければならないという課題は残されたままです。教育という専門性で賄える部分はあるのですが、児童虐待や貧困問題、合理的配慮については、教員だけで対応することに限界があります。

 私が理事を務めるNPO法人School Voice Projectで、2023年にスクールソーシャルワーカー(SSW)についてアンケート調査を実施し、提言書をまとめました。

 その調査では、SSWの働き方として決まった学校に勤務する配置型もありましたが、そのほとんどは週1回の勤務であり、その他多くの自治体では、問題が起こったときにだけ学校に出向く派遣型でした。

 このような働き方では、学校でソーシャルワークを担うという本質にはつながっていきません。ただでさえ分かりにくいソーシャルワークという概念を学校に浸透させることが難しく、本連載の前回のような状況になってしまいます。

 日本ソーシャルワーク教育学校連盟が行った23年実施の社会福祉士・精神保健福祉士国家試験受験学生福祉系大学4年次生(現役学生) 5600人の調査によると、学校教育分野で働きたいと思っている学生は12%に上りますが、正規雇用がないという理由もあり、実際の進路は2%にとどまっています。

 学校でチームをつくっていくためには、もちろん「質の担保」の問題もあることは承知していますが、雇用を安定させることも大切だと考えます。

 障害者制度が措置から契約になる際、公的介助の時間数を増やしてほしいと、当事者団体として要望しましたが、「担い手がいない」と突っぱねられました。それから20年がたち、重度障害者の地域生活は飛躍的に進みました。

 まずは、SSWを常勤化する。そうすることで、ソーシャルワークが学校文化に浸透し、子どもや教職員を含めた安心な学校づくりへつながるのではないでしょうか。

 なぜなら、ソーシャルワークはそこに集う全ての人の権利に基づく環境調整をする人なのですから。(おわり)

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