10月には合格発表が行われ、今年の教員採用試験は終了した。ということは、来年の採用試験に向かっての準備がスタートしたということである。採用試験の実施は5月、6月に前倒しの傾向がある。焦らせるわけではないが、教採試験は幅広く、多様な試験が課されるので、来年受験を予定しているのであれば、効率よく試験準備をしていく必要性がある。早めに取り組んでおきたい準備について言及する。
まずはなるべく早めに受験する自治体(都道府県・政令市)を決めることが重要だ。志望する自治体を決めたら、まずはその自治体についてよく知ることから始めたい。筆記試験は、その自治体ごとに内容や形式が異なるので、過去問題をそろえて分析しよう。3年分くらいをチェックすると、どの分野がよく出題されるのか、などその自治体の傾向が分かってくるので、これは欠かせない取り組みである。
また、受験する自治体の教育に関する基本的なデータも調べておく。小中高校の学校数、児童生徒数、教職員数などの基本的事項、さらにはいじめ、不登校などのここ数年間の推移などは押さえておきたい。
また、多くの自治体では、教育に関する基本方針を打ち出しているので、これにも目を通しておく。教育振興基本計画、教育改革プランなど多様な名称で出されているが、その自治体の抱える教育課題、それに対する方針やプランが分かり、これを知っていると面接や論作文で役に立つことが多い。
現在の学校教育は2017、18、19年改訂学習指導要領により実施されているので、何よりもこれをしっかりと理解しておく必要がある。教職課程で学んでいると思うが、読み込むことは結構大変なので、なるべく早めに取り組みたい。
学習指導要領は文部科学省のホームページからダウンロードできる。また、解説書なども発行されている。書き込みなどもでき、勉強しやすいので、冊子となったものを活用した方がよい。
学習指導要領を学習する際の基礎的なポイントを紹介しよう。「総則」については、「小学校教育の基本と教育課程の役割」に注目し、キーワードをピックアップし、記憶する。例えば、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」などである。
これらは、学習指導要領の骨子であり、理解していないと論文の執筆や面接での回答に支障が出る。
各教科について、「第1 目標」は、ぜひ暗記しておこう。目標には、各教科で身に付けるべき学力とはどういうものなのかが示されている。これを覚えていないと、適切な内容の論文が書けないし、面接でも答えられない。10行程度の文章であるから、全部覚えておいた方がよい。
小学校は全教科が対象で、全ての暗記が難しい場合は、キーワードだけでもしっかり頭に入れておきたい。
最近は教育時事に関する比重が高まってきている。教育原理、教育法規、教育心理などは、テキストが多く出版されているので、直前になって集中して勉強した方が効率がよいかもしれない。教育時事に関しては、早くから多様な情報を収集しておくとよいだろう。
教育に関するニュースは、「教育新聞」をはじめ各メディアで常にチェックしておきたい。これは、試験直前まで行う。こういう習慣がついたら、次には過去の教育時事をさかのぼる。少なくとも過去3年くらいの教育時事には通じておいた方がよい。
学習指導要領関連をはじめ、各種の答申、報告、通知などもきちんと集めておく。教育政策の動向を知っておくことは、試験対策上重要である。中教審の審議のまとめや答申はもちろんのことである。
教育施策の全体像を理解するために、特に次の2つには注目してもらいたい。まずは、2021年の中教審答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」。現在の教育の状況や課題、今後の展開を理解するためにぜひ目を通しておく。次に23年の「教育振興基本計画」。今後5年間の教育施策の方向性などがまとめられている。
また、問題行動など生徒指導に関する設問や面接での質問は多く出されるので、22年に出された改訂版「生徒指導提要」も重要な資料であり、しっかりとチェックする。