いますぐ面接の準備を始めよう――。教員採用試験の準備において、筆記試験はまとまった問題集などがあるため、集中的に勉強した方が効果的かもしれない。一方、面接対策は一朝一夕には無理である。教採試験の実施は前倒し傾向なので、来年の本番に向けて、なるべく早めに練習、準備を開始した方がよい。
近年は、どの自治体でも教員採用については、人物重視の観点から面接を最も重視する試験として位置付けている。試験で面接を実施していない自治体はない。多くの自治体では1次試験から面接を実施している。1次と2次両方で実施も少なくない。
仮に筆記試験が高得点であっても、面接で失敗すれば合格が難しくなるというのが現実だ。面接の攻略が合格の条件だと心得、念入りに準備を進める必要がある。
面接の狙いは何か。教師としての使命感、適性、実践的指導能力、職務遂行能力などを判断し、人物としての評価を行うものである。突き詰めると、「この人物に児童生徒の指導を任せてよいかどうか」を判断するものである。
具体的に判断される視点は、次のようなものである。
(1)人物の総合評価
(2)性格、適性の判断
(3)志望動機、教職への意欲などの確認
(4)コミュニケーション能力の確認
(5)協調性、指導性などの社会的能力
(6)知識、教養の程度や教職のレディネス
まずは、どのような形式で行われるのかを知っておかなくてはならない。面接の流れは、フローチャートを参考にしてほしい。
面接試験の代表的なフローチャート
[個人面接]
▽受付 受付では、自分の氏名、受験番号、大学名などをはっきりと言う
▽待合室 面接カードなどがある場合は記入
身だしなみをチェックする
携帯電話の電源を切る
知り合いと会ってもあいさつ程度に
呼び出しがあるまで静かに待つ
▽入室 呼び出されたら、きちんと返事をする
ドアの前に立ったら笑顔をつくる
ノックは2回する(ノックは必要か不必要か、あらかじめ確認)
返事があってからドアを開け入室する
▽着席 お辞儀をして席へ向かう
勧められてから着席する
「受験番号+氏名」または「大学名+氏名」を言う
▽面接 元気よく大きな声で明るく受け答えをする
敬語を正しく使う
▽退室 終了したら「ありがとうございました」と言う
起立して礼をしてドアへ向かう
ドアの前でもう一度お辞儀して退室する
▽待合室 次の指示があるまで待つ
代表的な形式は、個人面接、集団面接、集団討議(グループディスカッション)、模擬授業、ロールプレー、スピーチ、プレゼンテーションなどがある。個人面接の場合、面接官が2~3人程度で、時間は10~20分程度。集団の場合、受験者のグループは5人から多くて10人程度で、面接官は2~5人、時間は30分から長いと60分にも及ぶことがある。
質問の方法は、主に3パターンある。一番ポピュラーなのは、「1問1答法」だ。「部活動は何をしていましたか」「教育実習はどこで行いましたか」など具体的で客観的な問いのため、受験者も答えやすく、導入によく用いられる。「はい」「いいえ」で答えられる質問もあるが、それだけではなく、何か一言加える工夫をしたい。
次に、「なぜ教員を志望するのですか」「なりたいと思う教師はどのような教師ですか」など、受験者に考え方や理解の仕方などを述べさせる「供述法」がある。
理解力、表現力などを見るものであり、これらの質問に対して受験者は、自分の考えを論理立てて簡潔にかつ的確に答える必要がある。回答によっては、面接官からより突っ込んだ質問をされる場合もある。だからこそ、面接の準備は早めに行いたいのである。
受験者にとって最も手ごわいのが、「圧迫面接法」だろう。受験者の緊張状態における適応性を見ることが目的であり、否定的、高圧的な質問をする。
柔軟な判断力、問題処理能力が試されるもので、「あなたは教師に向いていないですね」「不合格になったらどうしますか」などの質問がなされる。一方的な決め付けをしたり、駄目ではないのに駄目であると言ったり、回答に関して揚げ足を取ったりする
対応は、「何を言われても、たとえ答えられなくても、笑顔で明るく対応」「しぶとく食らいついて話す」などが重要とされるが、いずれにせよ事前の十分なトレーニングが必要であろう。
面接のトレーニングであるが、これは1人では難しいので、同じ教職志望者と組んで実践するのが、一番である。2人1組になり、面接官と受験者の役割を交互に行い、具体的なシーン、質問を想定して練習することが求められる。
「同級生たちとグループを組んで、何度も面接の練習をしました。入室から着席まで何回も繰り返し、声の大きさなどもお互いにチェックしました」
「教育のニュースがあると、同級生たちとどのように思うか自分の考えを述べ合い、自分ならどうするか議論しました。人の意見も聞けて、大変役立ちました」
これらは合格者の体験談であり、グループでの練習が重要なことが分かる。
教育学部生であるなら、比較的練習相手を見つけやすいが、それ以外であると難しいこともあるだろう。教職サークルがあるなら参加したり、教職課程の担当官に相談したりして、相手を紹介してもらう手もある。
臨時採用などで学校現場にいる場合は、管理職や同僚の教師に相談して、練習相手になってもらうといい。校長が面接官の経験者であったら、ラッキーである。以前の面接がどのように行われたのか、再現してもらいながら、面接の指導をしてもらおう。お願いする場合はきちんと礼を尽くすことを忘れないようにしたい。
どうしても練習相手が見つからなかったら、録画を活用する方法もある。自らの所作や回答を録画し、マナーや話し方をチェックしていく。自分のどこがおかしいのかを視聴しながら修正していけばよい。
また、話す内容については、普段から教育ニュースに気を配り、自分の考えを400字程度にまとめる練習をするとよい。体験談のように人と議論するのも重要である。
面接で聞かれそうな10個の質問を次のように挙げておいた。それぞれどのような回答をするのか、各自で考え、400字程度でまとめることから始めてみよう。
教員採用試験の面接で聞かれそうな10の質問
・なぜ、教師になりたいのですか(志望動機)
・どのような教師になりたいのですか。
・教師に必要な能力とは何でしょうか。
・どのような学級を作りたいですか。
・不登校の児童生徒にどのような対応をしますか。2つ挙げてください。
・学習意欲を引き出すために、どのような工夫をしますか。具体的な教科を挙げて、述べてください。
・学習が遅れている児童生徒へは、どのような支援をしますか。
・保護者から「あなたの未熟な指導のせいで成績が伸びない」と言われました。どのように対応しますか。
・コミュニケーション能力を育てるのに必要なことは何でしょうか。
・SNSの利用についてどのような指導が必要であると考えますか。