一人で考え込んでいると、つい感情が暴走し、冷静さを欠いてしまうことがあります。感情のコントロール力が発展段階にある子どもたちならなおさらです。感情は脳がつくり出すものなので、脳の特性を上手に利用すれば、感情のコントロールもできるようになります。
感情を落ち着かせるために、心理学や脳科学で注目される手法に「再解釈」があります。これは、物事を違う角度から見つめ直すことで、感情のコントロールを助ける方法です。視点を変えることで、物事を冷静に見つめ直すことができるのです。
イライラなどの感情が高ぶると、多くの動物に共通し、爬虫(はちゅう)類などにも存在する原始的な「古い脳」の部位(扁桃体や視床下部)が活性化します。これは、人間が人間に進化する前から存在する領域です。しかし、ここで意識的に別の見方を試みると、前頭前野などの人間において高度に発達している「新しい脳」の部位が活性化します。この切り替えによって脳のリソースが論理的な新しい脳に集中し、古い脳の感情が自然に収まっていきます。この「再解釈」という方法は、脳が行動に合わせて特定のエリアを集中して働かせて効率化を図るという特性を利用したものです。
一人で悩みを抱え続けると視野が狭くなり、深みにはまってしまうことが多いものです。なかなか自分では捉え直しができない場合は、例えば状況を俯瞰(ふかん)できる友人を通して、新しい視点を得るというのも一つの方法です。自分の感情に共感し、寄り添ってくれる友人も大切ですが、異なる視点から冷静にアドバイスをくれる友人もまた貴重な存在です。同じ出来事でも、人によってその捉え方はさまざまであり、解釈も異なります。一人で抱え込んでしまうと見えなくなる一面が、他の人からは明確に見えていることもあるでしょう。自分の考えにこだわり過ぎず、柔軟に他者の視点も取り入れることが肝要です。
多様な意見を取り入れ、多角的な視点で考える柔軟さは、成長する上で必要な能力です。若いうちからこの柔軟性を鍛えることで、将来の人間関係や問題解決に役立つでしょう。そのためにも、自分自身でも俯瞰して物事を捉える力を涵養すること、異なる視点を持つ友人を持つことを大切にしていくこと、感情のコントロールにもそういった視点・捉え直しが大切だということを子どもたちに伝えてみましょう。