第9回 「自分の居場所」を見つけさせる方法

第9回 「自分の居場所」を見つけさせる方法
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 思春期の子どもたちは、時に「周囲にとっての自分の存在」や「自分の居場所」について考えて、不安になることがあります。

 前回も述べたように、人間には「所属欲求」という基本的な感情があります。これは「何らかの集団や環境に属していたい」という気持ちです。人類は進化の過程で、集団で生活し、知識や経験を共有し合うことで危険を回避し、生存率を向上させてきました。そのため、私たちの脳は集団に属していると安心感を得やすくなるように設計されています。

 「自分の居場所」というと、精神的に快適で安心感を得られる場所や環境のことを想像するでしょう。しかし、居場所の在り方は人によって異なります。一人で自由に過ごせる空間を居場所と感じる人もいれば、他者とつながり、支え合う中で安心感を得る人もいます。また、自分の価値観を共有できる仲間や、自分の能力や存在意義を認めてもらえる環境を居場所と感じる人もいるでしょう。

 居場所は、必ずしも物理的な空間とは限りません。趣味に没頭する時間、SNSのバーチャルな世界、地域コミュニティーやボランティア活動の場、さらには空想や読書の時間が居場所となることもあります。それぞれが求める居場所は多様であり、変化し続けるものです。

 歴史上の偉大な哲学者たちの言葉を借りれば、「自分が見ている世界は、自分の中にしかない」そうです。私たちは物事をどう受け止め、どう捉えるかによって、自分の世界を形づくっています。外的な環境そのものが居場所を決めるのではなく、自分自身の考え方やものの捉え方がほぼ全てなのです。

 この視点から言えば、「自分に居場所がない」と感じるとき、それをつくり出しているのは他でもない自分自身の心かもしれません。つまり、どこに行っても「自分に合った居場所」を見つけられる人は、居場所そのものを自分の中につくり出す力を持っていると言えるのです。

 教師としては、生徒が「居場所がない」と感じる状況に向き合うために、生徒たち自身に「どのような居場所を求めているのか」と問い掛け、自分の気持ちを整理させることが大切です。そして、生徒たちが、自分の心の持ちようで世界を居心地の良い場所に変えられる力を持っていることに気付けるよう、サポートすることが重要です。彼らが自分自身を理解し、自分の居場所を見つける力を育むことができれば、その先の人生もきっと力強く歩んでいけるはずです。

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