【教採キーワード―調べ確認してみよう(18)】学習指導要領の基準性

【教採キーワード―調べ確認してみよう(18)】学習指導要領の基準性
iStock.com/s-cphoto
【協賛企画】
広 告

学習指導要領の基準性とは

 2024年1月に、ある国立大学の附属小学校で、8つの教科と1つの活動で、学習指導要領に沿った授業が行われず、不適切な授業が進められていたことが報じられた。大学が公表した報告書(24年1月9日)によると、不適切とされた内容は、指導不足、履習年次の違い、授業時数の不足、不適切な観点別評価である。不適切な授業は長年行われた可能性があるため、学校は在籍児童だけでなく卒業生に対しても未履修の授業を補填(ほてん)することを発表した。

 この問題は、国で定める学習指導要領が、各学校で編成実施する教育課程にどの程度の拘束性を有するかということにつながる。つまり、学習指導要領の各教科等の欄に示す指導内容は、必ず取り扱う義務があるのか、また、学習指導要領に示す以外の事項を追加して指導することは可能なのか、さらに、学習指導要領に示している事項の順序を変えて指導することは可能なのか、ということが課題になる。

 以上のことは、学習指導要領は、各学校が編成する教育課程に対してどのような基準としての性格を有するのかということに帰着する。

学習指導要領総則における規定

 学習指導要領の基準性について、小中学校学習指導要領総則では次のように示している。

 「3 教育課程の編成における共通的事項 (1) 内容等の取扱い ア 第2章以下に示す各教科、道徳科、外国語活動及び特別活動の内容に関する事項は、特に示す場合を除き、いずれの学校においても取り扱わなければならない」

 ここでは、各教科等の「内容に関する事項」は「いずれの学校においても取り扱わなければならない」としている。「取り扱う」とは、各教科等の指導計画に示し、実際の授業実践に具体化することを意味している。このことを確実に行うため、各学校では学習指導要領に基づいて年間指導計画を作成すること、さらに週案などを作成し、授業の進度の調整や管理を行っている。また、授業時数に余裕を持たせて年間指導計画を作成することなどが行われている。

 続いて、総則では、次のように示されている。

 「イ 学校において特に必要がある場合には、第2章以下に示していない内容を加えて指導することができる。また、第2章以下に示す内容の取扱いのうち内容の範囲や程度等を示す事項は、全ての児童に対して指導するものとする内容の範囲や程度等を示したものであり、学校において特に必要がある場合には、この事項にかかわらず加えて指導することができる」

 ここには上の「ア」を確実に実施した上で、「特に必要がある場合には」「内容を加えて指導することができる」としている。例えば、指導事項についての知識・技能や思考・判断・表現を深めるなどの目的で内容を追加することができるとの意味である。なお、高校については、「ア」の規定は示されていない。

以上のような学習指導要領の性格が教育課程に関わる基準性の意味である。

広 告
広 告