文部科学省の要請もあり、教採試験の実施時期が前倒しになってきた。これに伴いエントリー時期も前倒しになってきているので、その準備も早めに取り組む必要がある。面接で重要になる自己PRについて、時間があるときにしっかりと考えておこう。
■25年は、5月実施が多くなる
文科省は昨年4月、2024年度は6月16日を標準日としている公立小中高校の教員採用試験について、25年度はさらに1カ月ほど前倒しし、5月11日を1次試験の標準とするよう都道府県・政令市教育委員会に通知した。教員のなり手不足は深刻で、早期化する民間企業の採用に対抗して人材を確保するのが狙いである。従って、25年度の試験実施日は5月となる自治体が多く出てくることが予想される。試験対策の準備は急がなくてはならない。
■募集要項を早めに入手し的確に読む
第一に行うのは、受験する自治体を決めることだ。試験日さえ異なれば、複数の自治体を受験することが可能。ただ、隣接する自治体は、1次試験が同じ日程であるケース多い。自分の希望、各自治体の教育の特色、これまでの試験の傾向などを見ながら、志望する自治体を決める。自治体を決めたら、採用試験の実施要項を入手する。どの自治体も間もなく公表するだろう。教育委員会のホームページを注意してみておこう。
実施要項に記載されている内容は、主に募集する校種・教科(科目)及びその採用見込み数、選考日および選考方法、受験申し込み方法および締切日、申し込みに関する注意事項、選考結果の発表受験資格、提出書類、提出先など。内容にしっかり目を通し、日程、試験の内容、出願に当たってどのような書類を準備すればよいのか、などを確認する。複数の自治体を受験するつもりならば、1次だけでなく2次試験の日程も確認しておく。
■早め早めに書類を用意
出願する際に提出する書類は、結構数が多い。2次試験時に提出する書類も含めて、主な提出書類を表にまとめておいた。提出書類は早めに用意し、きちんと内容、様式を確認するなどして落ち度のないようにしたい。願書の受付期間が短い自治体もあるので、十分注意したい。
■客観的に自己分析
自己PR文、自己推薦・評価・申告書の提出を求める自治体が多い。自己PRは、まず、エントリーシートを書く際に必要だ。自己PRなので、自分の中で最もアピールできる点を書けばよい。題材は何でも構わない。とにかく、「自分はこんな人物です」「自分の(性格などの)こんなところが教師に向いています」「教師になったら、こんなことをしてみたいです」というように、自分の持つ個性が「教師」という職業でどのように役立てられるか書くことが大切。
自己PRを書く前には、しっかりとした自己分析が必要だ。学生時代に力を注いだこと、教育実習で学んだことなどが主な内容である。面接の際の資料となるので、きちんと対応する必要がある。
■面接で自己PRは重要な柱
面接は通常、個人も集団も15分から30分くらい、長くても60分程度である。面接は何のためにあるかというと、自治体が受験者のことをよく知るためだ。「自己のPRを3~5分で行ってください」と言われることもある。この短い時間の中で、自分の良いところをどれだけPRできるか、教職に対する意欲をどれだけ打ち出すことができるか、事前に表現の仕方も含めて十分考えておかなくてはならない。自分のPRすべきところは、どのような質問に対してでも、打ち出していかなくてはならないのだ。
自分自身をできるだけ客観的に正確に分析してみよう。チェックする主なポイントは、表1の通り。この程度はじっくりと自己を分析してみる必要がある。分析ができたら、自分のことをよく知っている友人、教官などにも見てもらい、自分がどれだけきちんと自己把握ができているのか聞いてみてもよい。
表1 自己分析をするための15のチェックポイント
○自分はどのような性格をしているのか
○自分は友人からどのように見られているか
○学生時代に力を注いだ学科、科目、分野は
○大学のゼミ、卒論などで学んだことは
○アルバイト、ボランティアなどで学んだことは(印象に残ったことは)
○サークル活動などで力を入れたことは
○自分の教職観は
○教育実習で学んだことは
○教職の臨時採用で学んだことは(印象に残ったことは)
○(社会人経験者は)勤務経験で学んだことは
○感銘を受けた本、映画、映像作品などは
○現在、最も関心のあることは
○趣味、特技は
○(教職以外で)取得している資格、技能と取得動機
○教職に対する自分のセールス・ポイント
■自己紹介ではない
PR文を書く際は、「自分が努力したこと、工夫したことなどを具体的なエピソードとともに述べる」「何をしたのかではなく、その経験から何を学んだのかを示す」、この2点が重要点だ。書く際には、見出しを付けて内容を示す、アピールポイントを最初に書く、などの工夫も効果的だ。
自分がいかに教師に向いているかを示すこと。経験や成果を述べ、そこから自分の資質・能力を示し、それらが教員という仕事に向いていることを分かりやすく述べたい。
「責任感がある」「積極的だ」「忍耐力がある」「協調性がある」など、自分が勝手に思い込んでいる強みが先行していては、正しい自己分析はできなくなる。自分の印象に残っている経験を集め、その中から共通する考え方や行動を抜き出すことで、自分の強みが見えてくる。面接などでは必ず「具体的には」「どんな時に」などといった質問がされるので、過去の経験を多く集め、客観的に自分を分析することが重要である。
表2で「自己分析の重要な視点」を示しているので参考にしてほしい。
分析ができたら、今度はそれぞれの内容を具体的な成果、体験、エピソードでもって語れるようにしよう。「私は貴重な体験をした」と語るとき、抽象的では説得力がない。具体例が伴うと大変に効果的である。
表2 自己分析の重要な視点
▽身体的能力=健康であるか。体力、視力、聴力、スポーツ的な技能力などの身体的能力はあるか。病気や障害の有無。
▽性格=協調性、積極性、勤勉性、実直性、誠実性、忍耐力、情緒安定性などを備えているか。
▽能力=語学力、IT能力、事務的能力、文章能力など具体的なもののほか、計画性、表現力、理解力、コミュニケーション能力などを備えているか。
※ 成功する社会人には、「謙虚さ」「情熱」「献身性」「共感性」「障害を克服する力」が必要とされており、これらは当然教師にも求められる資質である。自己を分析して、3~5段階で評価し、自己の適性を知ることに努める。