第10回 問題行動調査の「自殺」の細目に「体罰・不適切指導」

第10回 問題行動調査の「自殺」の細目に「体罰・不適切指導」
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 不適切な指導をきっかけに自殺した子どもの遺族らでつくる「安全な生徒指導を考える会」は2023年10月30日、青山周平・文科副大臣(当時)と面談しました。子どもの自殺の原因について、依然として6割前後が「不明」となっている現状から、「生徒指導提要」の改訂を受けて、「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」の周知徹底と、指針の見直しを要望しました。

 翌31日、盛山正仁文科相(当時)も会見で「必要に応じて国の指針の見直しに向けた検討」と言及しました。現在、省内の「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」で、指針の見直しについて議論が始まっています。遺族の要望がかなうかどうか、現時点では未知数です。

 「考える会」の要望では、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の「自殺」の項目の「児童生徒の置かれた状況」という項目の改善もありました。これまでは、「不適切指導による自殺」があったとしても、「教職員との関係」や「不明」に入っていました。そのため、「考える会」は「指導死」の数値を明示してほしいと思っていたのです。「考える会」のほか、岡山県での県立高校の指導死遺族も、同様の内容を要望していました。そうして「状況」の中に「体罰・不適切指導」が新設されました。

 しかし、「指導死」を数的に抽出するには、いくつかの課題があります。まず、「状況」に「体罰・不適切指導」があった場合、「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」の基本調査で指摘することがあるのか、ということです。学校や教育委員会が初期調査をすることが多いのですが、「不適切指導」があった場合、学校や教委が、自殺の「状況」で「体罰・不適切指導」をチェックできるのでしょうか。

 生徒指導が関係したとの疑いがある場合、詳細調査に移行することになります。調査対象は「自殺又は自殺が疑われる死亡事案」です。警察や病院が「転落死」と扱っても、遺族が自殺と疑っている場合、指針に基づく調査対象になり得るとの話もされています。校内での「自殺」では、「転落死」とされることがあります。実際、生徒指導の対象になった生徒が校内から転落して死亡したケースがあります。少なくとも「学校事故対応に関する指針」に基づく調査はしてほしいものです。

 23年度は「自殺」の状況で「体罰・不適切指導」は「2」とありました。これは数字そのものに注目するのではなく、明示的になったことに意味があります。調査研究のベースになってほしいと考えます。(おわり)

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