第2回 「主体的な学び」を支える「オープン・スクール」

第2回 「主体的な学び」を支える「オープン・スクール」
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 赴任後、校務主任を2年間務めた。施設の安全管理や学習環境の整備などが、メインの仕事であった。そんな私を悩ませたのが、この建物「オープン・スクール」であった。

 緒川小学校は、1978年に「オープン・スクール」として建て替えられた。当時の東浦町長が設計事務所と共にオープン・スペースを持つ学校を建設することを決め、今の建物が建つことになった。その活用については、当時の国立教育研究所の加藤幸次先生(現上智大学名誉教授)に相談し、アメリカで行われていたオープン・スクールの教育を取り入れながらスタートを切ったと聞いている。

教室と廊下に続くラーニング・スペース
教室と廊下に続くラーニング・スペース

 教室と廊下を仕切る壁はない。廊下の先にはラーニング・センター(LC)という広いスペースがあり、その横に図書コーナーという本が並ぶ場所がある。この、教室・LC・図書コーナーの3つで一つの学年フロアが形成されている。特別支援学級を含め7つの学年フロアと特別教室は、5・6年生のみ2階に配置されているが、残りは平屋になっている。各教室や廊下はじゅうたんが敷かれていて、外周りにはクリンカタイルという茶色のタイルが敷き詰められており、上靴で自由に出入りできるようになっている。

 壁のない、だだっ広い校舎。校務主任として安全点検をしたり整備をしたりしていると、半日で1万歩を超えた。なぜ、このようなつくりになったのか。それは、子どもを中心とした学校をつくりたかったからである。子どもたちの学びは、自分の机にとどまらない。1日6時間、あの小さな机に小学生が座り続けることの方が難しいのかもしれない。緒川小の子どもたちは、学びによって学ぶ場所を変えていく。

 そして、学級の学びだけでなく、学年全体や複数学年での授業も行われていく。そのため、教室に壁がない方が便利なのである。学びは校舎にとどまらない。教室を飛び出して、ホールやプレイルーム、廊下、中庭、運動場でも学びが展開される。「校地全体が学びの場」と言われる緒川のスタイルである。

 校務主任は、子どもたちが門をくぐると学びが生まれるよう、さまざまな仕掛けを施していく。門の横には田んぼがあり、靴箱に向かう道には畑があり、入口にはハロウィンカボチャやクリスマスツリーが待ち受けている。昇降口を通過してからも、魚がいて、植物があり、本が並び…と、さまざまな学びを散りばめている。

 「オープン・スクール=壁のない学校」とは、単に教室に壁がないという意味合いだけではない。「個別」にも「協働」にも不可欠なのは、子どもの主体性である。その主体性を十分に発揮できるよう支えているのが、この「オープン・スクール」の建物だと感じている。

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