第10回 学校司書は本の専門家

第10回 学校司書は本の専門家
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 10回にわたって連載を書かせていただきました。読んでいただき、少しは学校図書館のイメージが変わりましたでしょうか。令和の時代の学校図書館は、もう本の倉庫ではありません。

 ちなみに本校の図書館には約5万8000冊の本があり、昨年度は1年間で5万4000冊の貸し出しがありました。一人あたり48冊の本を借りたことになります。図書館が利用されて本が回転するからこそ、利用者の動線が変わり、図書館を利用するのが特別なことではなくなっていきます。それは、生徒だけでなく教員にとっても同じです。

 学校図書館法に「図書館資料を収集し、児童又は生徒及び教員の利用に供すること(第4条1号)とあるように、学校図書館は教員のための場所でもあります。本校は先生方の利用も多く、昨年度は一人あたり年間約26冊の貸し出しがありました。利用の目的は、教材研究で利用される人、趣味の本を借りる人、お子さんの本を借りる人などさまざまです。忙しい教員は、書店に行く時間も取れません。「本のことならなんでも図書館」へとお伝えしていたら、最初は遠慮していた人も、慣れてくると気軽に声を掛けてくれるようになりました。そして、それが個人利用から授業利用へとつながっていきます。こうしたことができるのも、私が専任、専門、正規だからです。

 2024年12月に日本図書館協会 非正規雇用職員に関する委員会から「学校図書館職員に関する実態調査(個人向け) 報告書」が公表されました。この報告書では、文部科学省が推進する学校図書館を活用した教育の実現をしていくためには、特に学校司書の人件費に対する予算があまりにも足りず、現場の司書の「やりがい搾取」によってなんとか成立している現状が浮き彫りにされました。非正規の学校司書は、複数校兼務が多く、子どもたちの様子や授業の様子も把握できないまま、本の整理に追われています。教員の働き方改革が叫ばれている今だからこそ、教材研究や授業をサポートする学校司書が必要です。全ての学校に専任・専門、できれば正規の学校司書の配置を望みます。

 学校図書館も「図書館」です。学校図書館の一番の役割は、資料(本)と読者をつなぐことです。そして、先生が授業の専門家であるように、私たち学校司書は本の専門家です。正規で資格を持った司書が全校に配置されている埼玉県では、その専門性を多くの県民に知ってもらいたいと、15年前から実行委員会を組織し、「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本」という活動を行っています。本屋大賞のように、高校司書がその年に発行された新刊の中から、これを高校生に薦めたいという本を選んで投票し、ランキングにするものです。24年版の発表は2月14日に行われ、翌15日から埼玉県内の公共図書館、書店、学校図書館で一斉にイチオシ本フェアーが開催されます。ぜひ、この取り組みにもご注目ください。(おわり)

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