「日本の公立学校で、ギフテッド教育は無理」という声をよく聞きます。しかし、ギフテッド教育はどのような環境下でも、小さい規模からスタートできます。今回は、鹿児島県の農村部にある公立小学校の特別支援学級で、実際に実践されたギフテッド教育の事例をご紹介します。
K君(当時小学4年生)は、ADHDとASDの傾向があり、特別支援学級に在籍していました。しかし、K君は算数などの得意分野があるにもかかわらず、学校では苦手な部分ばかりを指摘されることにストレスを感じ、特別支援学級でもなかなかなじめずにいました。そんな中、K君の母親のHさんは、ギフテッドと障がいを併せ持つ2E(ツゥーイー※1)という人たちがいると知りました。2Eとは、ギフテッドの特性を持ちながら、発達障がいや学習障がい、また、視覚・聴覚障がいなど、学習に影響する障がいを持っている人のことです。
2Eは居場所探しにとても苦労するといいます。障がいのサポートをするために特別支援学級に在籍しても、認知力と知的好奇心の高い2Eの児童は学習のスピードの遅さなどから満足しにくく、一方で通常学級では障がいが目立ってしまい問題児のように扱われてしまいがちです。結果的に、2Eの子どもは一日中、大人から注意され続け、自己肯定感が低くなりやすいと言われています。
Hさんは新学期、K君の担任となったS先生に声を掛け、一緒にギフテッド教育研修を受講しました。2E児童には二重の個別最適化(※2)が必要だとされています。障がいへのサポートと、ギフテッド教育のサポートを同時に入れるという意味です。K君の場合は、すでに特別支援学級で障がいへのサポートは受けていますので、S先生とHさんはそこにギフテッド教育を足していく試みを行いました。
まず、S先生とHさんは、研修の初級コースでギフテッドの特性(※3)を学びました。そして、K君にはこのような特性が見られると認識を共有しました。
・完璧主義者
・既成概念にとらわれない発想力
・自分のやり方を貫く
・成熟したユーモア
・観察力が鋭い
・一人で勉強するのを好む
・権力がある人に対しても意見を持ち抗議する
・感覚が敏感
・活動的でエネルギッシュ
また、研修で学んだ、K君の特性に合った声掛けや環境づくりを実践しました。 この方法は効果がすぐに出て、Hさんはその時のことをこのように振り返りました。
「息子が小学校に入学し、高い好奇心からの行動を問題行動扱いされることが増え、親としてつらい思いをしていました。担任の先生と共にギフテッド児の特性や声掛けなどをとても分かりやすく学んだおかげで、学校嫌いになりかけていた息子が、前向きな気持ちで学校生活を送れるようになりました」(後編に続く)
※1 Twice Exceptional の略で二重に特別であるの意味
※2 Dual Differenciation
※3 ギフテッド特性チェックリスト(無料)
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