第6回 「6態様」より「オープン・タイム」(O・T)-木工グループの奮闘記-

第6回 「6態様」より「オープン・タイム」(O・T)-木工グループの奮闘記-
【協賛企画】
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 「6態様」の中で、最も「個別最適な学び」に針を振っているのが、「オープン・タイム」(O・T)である。個人による探究活動で、自分で目標を立て、学習計画を作り、実行していくという4~6年生の学びである。

 年度当初、「チャレンジしたいこと」のアンケートを取る。それを分野ごとに集約し、グループ分けをして担当職員を決める。各グループには6年生のプロジェクトリーダーと呼ばれる子どもがいる。Ⅰ期はそのプロジェクトリーダーが先生となり、グループみんなで活動の進め方を学んだり、道具や部屋の使い方を学んだりしていく。Ⅱ期とⅢ期は、Ⅰ期の学びを生かして、個人での学びを探究していく。

 ある年、私は木工のグループを担当した。6年生の一人の男の子が木工に長けており、プロジェクトリーダーを買って出てくれた。彼は木工室の道具や使い方を、グループの仲間に分かりやすく教えてくれた。しかし、Ⅱ期で子どもたちが挑戦しようとしている内容は、それだけではカバーできないことに気が付いた。そこで、隣にある北部中学校の技術科の教務主任に「小学校のO・Tで木工を教えてくれないか」と相談をした。日頃から連携を取り合っている教務主任である。快諾をもらい、子どもたちを中学校に招いてくれた。小学校にはない大きなスペースと見たことのない機械。子どもたちのワクワクは止まらなかった。Ⅰ期は1学期で終わったが、夏休みも中学校の木工室に通う子がいた。

O・T 中学校の先生と木工作業
O・T 中学校の先生と木工作業

 Ⅱ期が始まった。4年生の男の子が角材を持ってきて、「自分用のバットを作る」と言い出した。野球好きの男の子だった。うまくいかないことは目に見えていたが、Ⅱ期10時間の計画をしっかりと立ててきたのを見て、「やってみよう」と声を掛けた。のこぎりで切ったり、やすりをかけたり、必死になって作っていた。しかし、どうやってもバットの形には仕上がらないことに本人が気付き始めた。周りの子たちは作品が出来つつある中、一人だけ顔が曇っていた。

 しばらくして、彼はあることをひらめいた。「小さくして、ヒートンを付けてキーホルダーにしよう!」最終日には、格闘した角材が、バットのキーホルダーに変わっていた。うまくいかないことに直面したとき、どう計画を練り直すか、どう乗り越えるのか、メンタル面も含めて力を付けていくのがO・Tだと感じた。

 Ⅲ期の最終日、作品を持ち寄って発表会を行った。苦労話もたくさん出てきた。でも、みんな満足そうな顔をしていた。卒業文集にその一連の活動を書きつづった子もいた。子どもがむきになって夢中になっていく姿は本当に面白い。十分な時間を確保し、没頭させるからこそ得られる学びがあるのだろうと思う。

O・T 最終日の活動発表会
O・T 最終日の活動発表会
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