ギフテッド教育教員研修の中級コースでは、具体的な学習の指導方法について学びます。まず学ぶのは、絵文字と文字が組み合わさった思考スイッチ(※1)というものです。この思考スイッチは南カリフォルニア大学のサンドラ・カプラン博士がギフテッド教育向けに開発し、現在では広くアメリカの公教育で使われています。以前は「思考ツール」と呼んでいましたが、日本にはすでに思考ツールという名前のものがあることと、絵文字を見たら電球のスイッチがオンされたように子どもたちの思考を促すことができることから、「思考スイッチ」と呼ぶことになりました。
この「思考スイッチ」は教室内での個別最適化に役立つもので、通常の授業を退屈しがちなギフテッド児に対して、同じ教科書を使いながら知的好奇心が満たされる、より掘り下げた学びができるようになります。また、教室全体で使い、全ての子どもの思考する練習としても機能します。
次に、ギフテッド教育の教授法の一つとして、子どもの関心がどこにあるのかを探るためのさまざまなツールも学びます。2E教育では苦手克服ばかりに時間を割かず、得意な部分を伸ばすことが子どもの自己肯定感を引き上げ、学びの意欲を伸ばすのに効果があるとされています(※2)。そのためには、その児童が何に関心を持っていて、何が得意なのかを教師が知っておく必要があります。
研修でS先生は、光村図書の国語の4年上の教科書の「新聞をつくろう」の単元で、思考スイッチを使った授業を教室で試してみました。S先生は、子どもに新聞のテーマを選ばせ、K君は自分の好きなラグビーをテーマに選びました。
S先生はこの授業の後、このように話されていました。
「普段、K君は国語に苦手意識があり、できるだけ短時間で学習を終わらせたがる傾向があったが、今回の課題には長時間集中して取り組むことができた。これまで、教科書の内容をいかに効率的に学べるかということに重きを置き過ぎていて、児童の興味関心に合わせて授業するということを忘れていた。大切なことを再確認できた」
この授業では、K君の苦手分野「国語」と得意分野「ラグビー」を掛け合わせるという2E教育の手法を用いています。K君の好きなものに対する好奇心や意欲も手伝って、苦手な分野を楽しく学べた好例です。
Hさんは、研修を受講後、中学校の教師になりました。研修で刺激を受けて、もう一度、多くの子どもたちと触れ合いたくなったと言います。ギフテッド児は、都市部・地方関係なくいますので、日本中で、サポートが広がってほしいと思います。
※1 日米ギフテッド教育協会の思考スイッチは、カプラン博士のPrompts of Depth and ComplexityとContent Imperativesに絵文字を組み合わせたものと、アメリカの公教育で広く利用されているScholarly Attributesに絵文字を組み合わせたものからなる。
※2 Strength based learning
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