第6回 ギフテッド・キャンプ①-日米のギフテッド児を取り巻く状況の違い-

第6回 ギフテッド・キャンプ①-日米のギフテッド児を取り巻く状況の違い-
【協賛企画】
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 ギフテッド児の抱える困難に孤立があります。ギフテッド児は思考方法が一般の子どもと違うため、なかなか話の合う友人を見つけるのが難しいのです。そのため、教室では無口で社交的に見えなかったり、協調性がないと言われたりします。また、友人が多そうにしていても、実は相手に合わせるばかりで自分が本当に興味のあることについては話せない状態であったりします。そのため、一時的にでも、ギフテッド児同士を集めて交流させることで、自分の考えを自由に共有できる仲間との出会いが自己肯定感を高め、「ギフテッド児は自分は一人ではない」という実感も得られ、やる気の向上にもつながります。

 シャロン・マエダ先生が率いるアメリカ・カリフォルニア州オレンジ郡タスティン市の公立学区では、ギフテッド教育プログラムに在籍するギフテッド児に向けて、夏休みの1週間を利用してサマーキャンプが行われています。これは、ギフテッドの子どもたちにとっては探究学習に取り組め、教員にとってはギフテッド教育研修の一環としてこれまで学んだギフテッド教育を実践でき、保護者にとってはギフテッドについてのレクチャーに参加できるというものです。

 アメリカで実践されているこのキャンプをモデルに、2024年7月に日米ギフテッド教育協会では、福岡県宗像市にて「Thinkers サマーキャンプ in 福岡 2024」を2泊3日で主催しました。ただ、アメリカと日本では環境が大きく異なるため、私たちは日本独自の事情を考慮し、プログラムをアレンジしました。

 日本でギフテッド児を集めると、不登校の児童、または五月雨登校の児童が多く集まります。日本ではギフテッド教育が実施されていないことから、多くのギフテッド児が学校に苦痛を感じて不登校になりがちです。また、公立のホームスクーリングの制度もないため、その子たちに学習の機会が継続して与えられず、放置されてしまうのです。そのため、心に傷を抱えて社交的になれないケース、外遊びの経験の少ないケース、集団で勉強する習慣がないケースなども考慮する必要がありました。

 また、日本ではギフテッド児を集めると、2E児童(※)がより多く集まります。それは、日本ではギフテッド児の判別を公教育で行わないため、発達障がいを疑い、WISCを受けたらIQが高いことが分かったというケースが多いためです。そのため、障がいをサポートする人員確保も課題となりました。

 上記の点を考慮して、海水浴や飯ごう炊飯など、自然と触れ合う時間も大事にするプログラム作りをしました。また、1クラスあたりの先生の人数を多く配分しました。

「Thinkers サマーキャンプ in 福岡 2024」での子どもたちの様子
「Thinkers サマーキャンプ in 福岡 2024」での子どもたちの様子

2024年のサマーキャンプの様子は、こちらの動画でご覧になれます。

 

*ギフテッドと障がいを併せ持つ児童のこと

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