第9回 「6態様」より集団学習/マスタリー・ラーニング

第9回 「6態様」より集団学習/マスタリー・ラーニング
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 緒川小は個別の授業が続く――そう思われていることがある。否、緒川小の個別の時間はそんなに多くない。大半は集団学習・一斉授業である。「週プロ」は学期に1回、「O・T」は年間25時間、教育課程1015時間からすれば、ほんの一部である。

 注目校ではあるものの、本校は公立の一般校である。地元の子が通い、職員も通常の異動で赴任してきた先生たちばかりである。新任の先生だって毎年入ってくるし、一般的な一斉授業の研究授業で、腕を磨くことも必要だと思っている。

初任者研修の研究授業
初任者研修の研究授業

 そして、集団学習でなければ得られない学びもあると感じている。私も緒川小に来る前は、ごく一般的な学校を渡り歩いてきた。自分としては学級経営を核とした道徳の授業や国語の読み深め、学級の話し合い活動や行事づくりが得意だった。本音で語り合える学級を創ると、学びはどんどん深まって面白かった。

 緒川小であっても、その部分は変わらない。さまざまな子が集う学級だからこそできる、みんなで見つけ出す授業、練り上げる授業は、個では味わえない達成感や満足感がある。また、そのような学びを通して相手への思いやりや優しさ、理解が育ってくる。多様性の時代だからこそ、このような授業も大切だと思っている。

 一方で、一斉授業だけでは学びきれない分野もある。能力差の大きい算数の計算領域などで、力に合わせた授業展開が必要となってくる。そこで「マスタリー・ラーニング」という方法を取り入れている。技能の完全習得と定着を目指したもので、習熟度差が生まれてきたところで学年授業に切り替え、習熟度別のクラスにして学びを続けていく。

 6年生は3学期に算数「6年間のまとめ」を行っている。学年3学級が4~5クラスに分かれ、少人数で学びを進めていく。昨年度は、進度が最もゆっくりなクラスを私が担当した。8人ほどのクラスであったが、みんな算数嫌いで数式を見るだけで悲鳴を上げるような子たちだった。

 一斉授業ではじっと我慢をしているような子たちが、少人数クラスでははつらつとしていた。できないことは恥ずかしいことではなく、仲間と共に少しずつできるようになっていくことに喜びを感じていた。進学に向けて自分の力を確認し、伸ばし、自信を持つという「マスタリー」の時間になったと思っている。

 「個に応じた学び」が注目され、一斉授業が見直されつつあるが、これまでの一斉授業にも良い部分はたくさんあるのではないだろうか。ベテランは自信を持ってそのような授業を見せていけばいいし、緒川小であっても大事な学習形態の一つだと思っている。

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