「Thinkers サマーキャンプ in 福岡 2024」で教鞭を執ることは、日米ギフテッド教育協会のギフテッド教育研修の一部として組み込まれており、先生方はキャンプの3カ月前から授業づくりに取り組みました。
先生方の大きな戸惑いの一つに、担当のクラスが低学年だったとしても、集まるのがギフテッド児のみなので、何年生向けの授業をしてよいか分からないというのがありました。普段、いろいろな児童が交ざる教室を指導する先生方は、ついつい授業案も平均的な学力の児童に合わせた内容にしてしまいがちです。多くのギフテッド児の学習スピードは、一般の児童よりおおむね1年前後先を行くと言われています。中にはもっと先の学習レベルに到達する児童もいます。そのため、研修の講師が指導して、授業を多様なギフテッド児向けに変えていくという作業をしました。
一方で、日本のギフテッド児は不登校が多いため、そもそも学習の準備ができていないケースも想定しないといけません。そのため、思考力のレベルは高く設定したままで、できるだけ柔軟に、どんな学習レベルでも参加しやすいプログラムづくりに専念しました。
研修で、先生方は思考スイッチを学びました。思考スイッチは低学年の子どもには難しいのではないかと心配されていた先生もいましたが、実際に低学年のキャンプのクラスで実践すると、小学1年生でもどんどん思考スイッチを使いこなす子もいて驚いたという報告もありました。
先生方は、一口に「ギフテッド児」と言っても、シャイな子、積極的な子、アートが好きな子、科学が好きな子など、それぞれ違う個性を持っていることを学びました。そして、障がいの有無や、不登校などで心に傷を抱えているかどうかでも、授業中の配慮を変えていく必要があることも学びました。さらには、そのような困難を抱えている子どもでも、ギフテッド児同士が集まる適切な環境があると、すぐに打ち解けて自分たちの世界をシェアし始めることを学びました。
このキャンプでは、見学しながらギフテッド教育の基礎が学べる入門研修も実施しました。以下は、参加された教育学研究科修士課程在籍中の大澤花那さんの感想です。
「実際に思考スイッチを子どもに見せて、子どもたちのアイデアが膨らんでいく様子やより生き生きと話しだす様子を見ることができた。低学年の登壇発表にてある子が「トンなんですよ。キログラムじゃなくて」と発言した。大人であれば簡単に単位の違いを想像できるが、子どもの年齢の目線でその発言のすごさを考えることが大切だと感じた」