教員採用試験の面接で、「2021年の中教審答申では『個別最適な学びと協働的な学びの実現』が示されています。あなたはこの学びをどのように捉え、授業に具体化しますか」という質問がなされることが想定される。
これらの学びは現在の学習指導要領には示されてはいないものの、次期学習指導要領の改訂に関わるキーワードであることから、教育委員会によっては実践化に向けた取り組みを進める動きも見られる。一方、これらの学びは、現在の学習指導要領の告示以降の答申で提示された概念であることから、学習指導要領に示す「主体的・対話的で深い学び」との関係の整理も今後の課題である。
24年12月の中教審への諮問事項にも、次のように相互の学びの整理を検討課題として挙げている。「学習指導要領における重要な理念の関係性をどのように整理すべきか。その際、『主体的・対話的で深い学び』や『個に応じた指導』『個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実』との関係をどのように考えるか」。
個別最適な学びについは、21年の中教審答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」の3―(1) の箇所に示されている。答申では、学習指導要領の総則に示されている「個に応じた指導」(「第4 児童生徒の発達の支援」)との関わりで個別最適な学びを説明している。まず、「子供一人一人の特性や学習進度、学習到達度等に応じ、指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行うことなど」を「指導の個別化」とする。次に、「教師が子供一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供することで、子供自身が学習が最適となるよう調整する」ことを「学習の個性化」としている。
「『指導の個別化』と『学習の個性化』を教師視点から整理した概念が『個に応じた指導』であり、この『個に応じた指導』を学習者視点から整理した概念が『個別最適な学び』である」としている。やや循環的な説明となっているが、「個別最適な学び」とは「指導の個別化」と「学習の個性化」を内容とする学びといえる。この学びを実現するためには、ICTを活用して学習履歴(スタディ・ログ)を活用したり、児童生徒自身がICTを活用して、学習の見通しを立てたり、学習の状況を把握したりすることが期待されている。
協働的な学びについては、次の点が示されている。「子供一人一人のよい点や可能性を生かすことで、異なる考え方が組み合わさり、よりよい学びを生み出していくようにすること」「同じ空間で時間を共にすることで、お互いの感性や考え方等に触れ刺激し合うことの重要性」など。また、「同一学年・学級はもとより、異学年間の学びや他の学校の子供との学び合いなども含むもの」とされ、ICTの活用によってさらに発展させることができるとしている。
個別最適な学びと協働的な学びの両者の関連については、「各学校においては、教科等の特質に応じ、地域・学校や児童生徒の実情を踏まえながら、授業の中で『個別最適な学び』の成果を『協働的な学び』に生かし、更にその成果を『個別最適な学び』に還元するなど、『個別最適な学び』と『協働的な学び』を一体的に充実し、『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けた授業改善につなげていくことが必要」としている。