2020年、長男は幼稚園、次男は保育所に、それぞれ通っていました。私は小学5年生の担任でした。ある日、長男の就学時健診で早退しました。すると、クラスのある男の子が言いました。
「それってお母さんが行くんじゃないの?」
素直な疑問だと思います。私は言いました。
「これは親の仕事。母親でも父親でもいいんだよ。僕は先生という仕事をしているけど、父親という仕事もしているんだ」
他の場面でも、「子どもが熱を出したから、明日は先生が休むことになると思うからよろしくね」「今日は下校したら、休みを取って保育所の迎えに行く」などと、母も父も関係なく子育てをする姿勢をクラスの子どもたちに見せました。私がいない間、学級の子どもたちは自分たちで責任を持って取り組んでくれました。彼らは、子どもが個別最適に学び、主体的に学ぶということを私に気付かせてくれました。担任不在は、子どもたちにとってのマイナスでなく、むしろプラスになると感じられたエピソードです。
学級の保護者会でも、家庭の事情を話し、理解を求めました。お母さん方から「イクメンですね」と褒めていただくこともありましたし、「息子が『先生は今日〇〇という理由で休みだった』と家でも言ってます」「先生の働き方が新鮮。うちの旦那にも少し見習ってほしい」などと、自分の働き方が世の中に影響を与えているような感覚もありました。
また、育児時短時間勤務(半日)の際、長男が「父ちゃんみたいな働き方もいいな」と言いました。平日の午後から夜にかけてゆっくり過ごせ、理想の生活が送れました。長男の友達からは、「なんで学校の先生なのに、夕方にいつもいるの?」と聞かれたこともあります。
平日を無理なく過ごせるので、土日も好きなことができます。大学の講義で働き方や子育てについてお話しさせていただいた際には、「そこまで考えたこともなかった。社会に出る前から自分のライフプランを考えた進路(就活)を考えたい」と感想をいただきました。
子どもにとっての大人像、ロールモデルは何と言っても親と先生です。仕事はつまらないもの、勉強は苦しいもの、家事育児は手間が掛かるもの・・・。そうした大人たちの姿を見て子どもたちは育ちます。昨今の教員不足や少子化も、ここに原因があるのかもしれません。
だからこそ、ゆとりをもって楽しく働き、毎日笑顔ですごしたいのです。子どもたちが出会う大人がバラエティーに富むことで、「これが普通」「こうあらねばならない」が崩れ、子どもたちの多様性が広がっていくのではないでしょうか。(おわり)