いじめの防止については、近年のいじめの発生状況およびいじめの防止に関わる取り組みに関する基礎的知識や、教員としていじめの防止をどのように進めるか、具体的な意見を求められることが想定される。そのためには、いじめの認知件数とその内訳、推移などの情報が必要であり、また、いじめの定義やいじめ防止対策の基本が法律でどのように定められているのかを、確認しておきたい。
いじめの認知件数その他については、文部科学省が毎年行っている「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によって確認することができる。この調査では、学校種別のいじめの認知件数の推移や学年別の件数、発見のきっかけ、重大事態の発生学校数や件数、日常の取り組みなどが示されている。2023年度のいじめの認知件数および重大事態の発生件数は過去最多となっている。学年別の認知件数では小学校2年生が最も多くなっている。これらの調査結果を確認することで、いじめ防止のための対策や取り組みに何が必要かを考えることができるので目を通しておきたい。
いじめの定義、いじめ防止のための仕組みや制度は、いじめ防止対策推進法に定められている。この法律ではいじめを次のように定義している。「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう」。ここでは「心理的又は物理的な影響を与える行為」「児童等が心身の苦痛を感じている」との記述に注意しておきたい。
次に、いじめを防止するため、国、地方公共団体、学校は、それぞれいじめ防止のための基本方針を作成することとされている。学校で定める基本方針には、いじめの定義やいじめの未然防止、いじめの早期発見のための措置、いじめの情報を受けた際の組織的な対応と措置などが規定されている。各学校のホームページにも掲載されているので、内容を確認しておきたい。
さらに、いじめ防止対策推進法では、いじめの防止に資するため「全ての教育活動を通じた道徳教育および体験活動等の充実」を図ることを定めている。また、いじめの早期発見のための措置として、児童生徒に対する定期的な調査や相談体制の整備を示している。
いじめの重大事態については、次の2点を定めている。
「一 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき
二 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき」
重大事態とは、児童生徒の生命、心身または財産に重大な被害が生じる疑いがある事態、児童生徒が相当期間欠席を余儀なくされる事態のことである。この事態に対処するため、学校の設置者または学校に組織を設けて、調査を実施し事実関係を把握することとしている。また、重大事態が発生した場合、当該学校は教育委員会を通じて地方公共団体の長に報告することを義務付けている。
いじめを防ぐための日常の取り組みや実際の児童生徒および保護者への対処については、各教育委員会が教員研修用に作成した資料・手引などを公表しているので、それらを参考にしたい。