不登校児童生徒の人数は、2023年度の文部科学省の調査によると過去最多となったことが報告されている。不登校児童生徒への配慮についての基本的な考え方、学ぶ権利や機会の保障、関連する法令などの基礎的知識について、修得しておく必要がある。
学習指導要領の総則では「特別な配慮を必要とする児童生徒への指導」の3つの項目の1つとして「不登校児童生徒への配慮」が2点にわたって示されている。1点目は、保護者や関連機関との連携、専門家の助言・援助を得ながら、社会的自立を目指す観点から、個々の児童生徒の実態に応じた情報の提供やその他の支援を行うこととしている。総則の解説では、不登校は、取り巻く環境によってはどの児童生徒にも起こり得ること、不登校を「問題行動」として判断するのではなく、児童生徒に寄り添い、共感的理解と受容の姿勢をもつことが重要としている。
2点目は、不登校児童生徒の実態に配慮した、特別の教育課程を編成する場合の指導の工夫改善についてである。学校教育法施行規則第56条に基づいて、文科大臣の指定を受けて、不登校児童生徒の実態に配慮した教育課程の編成を行う学校は「学びの多様化学校」と呼ばれている。これらの学校では、個別学習やグループ別学習などの指導方法や指導体制の工夫改善に努めるとされている。
この法律では、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援を行うこと、不登校児童生徒が安心して教育を十分に受けられるよう、学校における環境の整備を図ることなどを定めている。また、第8条~第13条において、不登校児童生徒に対する教育機会の確保に関する事項を定めている。
第10条では、特別の教育課程に基づく教育を行う学校(「学びの多様化学校」)の整備、第11条では、学習支援を行う教育施設の整備、第13条では、学校以外の場における学習活動等を行う不登校児童生徒に対する支援について定めている。これらの規定を受けて、各教育委員会では相談窓口を設けたり、保護者同士の情報交換会を行ったり、不登校児童生徒の居場所づくりや学びの支援を行ったりしている。
なお、不登校児童生徒が学校外の教育支援センターなどの公的機関や民間施設において、相談・指導を受けている場合、一定の要件を満たせば、校長は指導要録上出席扱いにすることができる。さらに、不登校児童生徒が、自宅においてICTを活用した学習活動を行った場合、一定の要件を満たせば、校長は指導要録で出席扱いにして学習成果を評価することができる。
不登校児童生徒数に関しては、文科省が実施・公表している「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」で確認することができる。23年度の調査では、小中学校において年間30日以上欠席した不登校児童生徒数は34万6482人となり、11年連続増加し過去最多となったことが報告された。在籍児童生徒数に占める割合は小学校2・14%(47人に1人)、中学校6・71%(15人に1人)となっている。児童生徒の不登校を把握した事実としては、「学校生活に対してやる気が出ない等との相談」が最も多く、次いで「不安・抑うつの相談」「生活リズムの不調に関する相談」となっている。