実は、われわれギャンブル依存症の当事者や家族には、職業が「教師」という人が驚くほど多いのです。依存症と聞くと「だらしがない人」「意志が弱い人」「遊び人」などのイメージを思い浮かべる人がいまだに多いと思いますが、実際には全く違います。ほとんどの人が真面目な働き者で、明るいスポーツマンだったり、コミュニティーのリーダーだったりします。教師、自衛官、警察官、看護師、消防士、公務員など堅い仕事の人も多数います。
ギャンブル依存症問題が深みにはまるのは、多重債務に陥るからです。金融機関はもちろん、家族や友人、知人が、際限なくお金を貸してくれるからです。なぜそんなことになるのか、それはギャンブル依存症者が、世間が考えるギャンブル依存症者に見えない、俗に言う「いい人」だからです。不真面目で約束を守らず、いい加減で、遊び人だったら、他人はお金を貸してくれません。
依存症というのはストレスと深い関係があります。特に真面目な日本人は、他人に相談したり弱味を見せたりすることが苦手です。「自分のことは自分でやれ」「他人に迷惑をかけるな」といった教育を受けてきているため、「相談すること=他人に迷惑をかけること」と思いがちです。黙って歯を食いしばってやり遂げるのが美徳であり、大人の責任だと思っています。
仕事で追い込まれて疲れ切っているとき、何かに依存することは、ストレスや心の傷によく効きます。頭の中をグルグルと駆け巡る嫌な考えや憂鬱(ゆううつ)な感情が、何かに依存しているときはきっぱりと忘れられます。しかも、ギャンブル依存症は他人に見えにくく「しっかりやる」「完璧にやって当たり前」と思われている教師にとって、うってつけの気分転換になります。「まさか自分は、ギャンブルにハマったりしない」という自負もあります。
教師がギャンブル問題で横領や窃盗などの事件を起こすことが案外多いことは、ニュースなどでお気付きかもしれません。私が常々提唱しているのは子どもたちへの依存症教育だけでなく、まず教師のストレス解消に力を入れ、教師自身が依存症について学ぶ機会を得て欲しいということです。そして、万が一ギャンブル依存症になってしまったら、速やかに自助グループにつながるか、休職して入院するか回復施設に入ることをお勧めします。こういった治療法も、学校関係者には理解しておいてほしい知識です。