教育界の“タブー”議論 政治との壁打開は「非公式」交流が鍵

教育界の“タブー”議論 政治との壁打開は「非公式」交流が鍵
教育と政治を巡って意見を述べる登壇者たち=撮影:山田博史
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 政治やお金など、教育現場で語ることが“タブー視”されがちなテーマについて語り合うイベントが5月4日と5日、東京都内で開かれた。このうち政治と教育をテーマにしたセッションには、鈴木寛元文部科学副大臣や現職の地方議員が登壇し、いかに学校現場の教員と地方議員などが垣根を越えてコミュニケーションを図るかなどについて、議論が交わされた。

 「TABOO―タブーを語る教育サミット2025」と題して開かれた同イベントは、市教委職員や中学校講師など教育関係の仕事に携わる20代の4人が中心となって主催。「女性活躍」や「企業」「お金」など、教育現場で語ることがタブー視されがちな6つのテーマについてセッションが開かれた。2日間で高校生や大学生、学校教員など10代~60代の幅広い年代からのべ300人が参加した。

 このうち5日午前には、「結局、本当に政治から教育を変えられるんですか?」をテーマにセッションが開かれ、鈴木元文科副大臣と愛知県日進市議会議員の吉野裕斗氏、東京都渋谷区議会議員の橋本ゆき氏が登壇した。セッションは、登壇者の発言を受けて参加者が小グループに分かれて議論する形で進められ、会場前方のスクリーンに次々と表示される参加者の意見をもとに、登壇者が次の論点につなげて議論を深め合った。

 セッションの中では、教育現場と議員との間には距離があり、直接話し合う場がほとんどないことや、政治的中立性の観点から教員が政治に関わりづらい事情などが課題として取り上げられ、スクリーンには「政治から教育を変えるより、教育から政治を変えることができるかを聞きたい」「業務量が膨大で人が足りない」などといった参加者の意見が表示された。

会場の参加者も車座になって議論に加わった=撮影:山田博史
会場の参加者も車座になって議論に加わった=撮影:山田博史

 こうした意見を踏まえ、鈴木氏は教員と議員などが交流する場づくりについて、「昔は歓送迎会など本音で語り合う場もあったが、今の学校現場では飲み会はなくなり、フォーマルな場しかなくなった。ただ、世の中は非公式な場で実質的に物事が決まることがよくあり、インフォーマルに議員などとも語り合える場をどうデザインしていくかが問われるのではないか。キーワードは『非公式』だと思う」と述べた。これを受けて、こども食堂や学校の運動会など身近な場で「飲み会2.0」を考えてはどうかといった意見が上がった。

 また、政治的中立性が教育現場と政治の壁になっている点について、橋本氏は「政治にアクセスすることは当然の権利だ。授業で特定の議員を応援することでもなければ、教育に携わる立場から声を上げたり、地元の議員に頼ったりすることは当然であり、それほど中立性を意識する必要はないと思う」と述べた。

 吉野氏は「相談の際に話しやすい方々が多い印象の分野がある一方で、教育関係の方からはこれがおかしいと責められることが多いと感じる。現場が忙しいこともあると思うが、まずは対話をしたい。一方的な要望という形よりも解決案を一緒につくりあげていきたいし、他の自治体でこんな施策があると提案していただけるとありがたい」と語った。

 セッションの後、橋本氏は「学校の教員が政治に頼ることや関わることにハードルを感じていることが、よく分かった。私自身も話し掛けられやすいように、また自分から話し掛けることをもっと意識したいと感じた」と話した。吉野氏は「私も含めて、議員の役割や日々の活動を伝えることができていないと感じた。教員の方々ともっとコミュニケーションを取ることが必要であることを再認識した」と話した。

 2日間を通してイベントに参加した群馬県の小学校教員の男性は「いろいろと学びたいことに加えて、大学生や現役の教員、教委の方とつながりを持つことも大事だと思って参加した。学校でコミュニケーションを広める活動に取り組んでいるが、この場で一つのヒントを得られたと感じている」と話した。

 イベントの主催者の1人、小泉志信さんは「物事をタブー視することで、自分は触れずに考えなくていいと距離を置いてきたことに対し、自分も当事者であると多くの年代の参加者が認識して対話できたことは、大変意義があった。世代を超えた対話の場を生み出せたのは、上の世代と下の世代をつなぐ“間の世代”である私たち20代がこの場を企画したからこそであり、今後も社会から必要とされる限り、この場を次の世代へと引き継ぎながら続けていきたい」と話した。

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