第2回 なぜ今、日本の学校にSELが必要なのか

第2回 なぜ今、日本の学校にSELが必要なのか
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 皆さんの中には、SEL(Social Emotional Learning)という言葉を初めて聞いたという方もいらっしゃるかもしれません。日本ではじわじわと広がってきている教育アプローチですが、世界ではすでにスタンダードになっている国や地域も増えています。

 アメリカでは1990年代ごろから本格的にSELの研究や学校現場での取り組みが始まり、2015年にはシカゴで全校導入されました。10年にはシンガポールの学校で必修化され、続いてメキシコでも全校導入がなされました。さらには、イェール大学やスタンフォード大学をはじめ、オンラインハイスクールなどでも実施が進んでいます。

 私は「海外と同じ教育プログラムを導入すべき」と言いたいのではありません。SELはこれだけさまざまな国において教育の基盤として根付いていますし、私は今の日本でもそれが大いに求められていると考えているのです。

 日本の子どもたちの自己肯定感の低さについては、皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか。近年では不登校の増加も取り沙汰されています。2023年度の小中学校における不登校児童生徒数(小・中)は、過去最多の約34万6千人にも上っています。さらにここ数年、警察庁・厚労省の自殺統計では、児童生徒の自殺は500人台で推移しています。

 これらの子どもたちが抱えている心の問題、そして学びに向かっていく姿勢に対して、SELは効果を発揮します。

 私たちが、SELを軸にした教員研修や授業、伴走支援を行っている沖縄県うるま市立A小学校では、1年間のSEL実践の結果、不登校の児童11人に改善傾向が見られました。また、いじめの被害児童数も50人以上減少しました。ちなみに、SELの取り組みを始める前年度は不登校の改善傾向のある児童は0人でした。

 加えて、これまで自身の気持ちとの向き合い方がうまくいかず、問題行動につながっていた子も「『心が荒れているときはこう対処する』と自分の取り扱いが分かってきたようだ」と先生がおっしゃっていました。

 こうした子どもたちの変化が見られるのはA小学校だけではありません。中学校、高校現場ではもちろん、現在は大学においても不本意入学の学生たちの学びの姿勢づくりとしてSELを導入するケースが出てきています。

 このように、SELは非認知能力(EQ)の育成につながります。そして、IQ(認知能力)とEQ(非認知能力)は相反するものではなく、相乗効果で向上していくものです。土台となる非認知能力が高まれば、その上にある認知能力も伸びていく。つまり、結果的に偏差値や受験などに関わる学力の底上げにもつながるのです。

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