教育実習は主に5月、6月に行われる。コロナ禍や教員養成改革に影響を受けてはいる教育実習であるが、それでも教員養成課程の中でも最も重要で貴重なものといえる。このハイライトをより有意義なものとするためのポイントを人との関わりを軸に見てみよう。
教育実習は教師になるために大学で学んだ知識などを、実際の教育現場で活用し実践できるかどうか試すものである。教師の仕事はどういうものか、授業だけではなく学校教育全体で体験する。教員採用試験に臨む上でも重要な知識、技能、示唆を与えてくれる貴重な機会であり、これをぜひ有効なものとするために、適切な準備を進めたい。
まず、実習の受け入れ校で事前の打ち合わせとしてガイダンスが行われるが、その際に確認しておかなくてはならないことは次の通り。
・使用教科書
・実習中に教える単元・内容
・出退勤時間(出勤簿の扱い方)
・指導教官の名前(中高は教科名)
・担当する部活動
この他、校内に何があるのか案内して教えてもらう、担当する児童生徒の名簿をもらって名前を読めるようにして覚えておく、最寄の駅から学校まで何分かかるか確認する、校区の様子を歩いて見てみる、この程度はぜひガイダンスのときにやっておきたい。
服装は社会人らしさを打ち出すこと。打ち合わせでもスーツとネクタイで訪問する。実習中も、体育の授業や何かの作業以外は、スーツとネクタイが基本。きちんとした服装で授業を行う。
教育実習中は、とにかく児童生徒をしっかり見て、積極的に関わり合うことがもっとも重要であると心得る。授業の構想を立てたり、日誌を付けるなど記録をとったりすることは重要ではあるが、これらは児童生徒が帰った後でもできる。机上で学べることは、児童生徒が帰ってからやればいい。いる間は、できるだけ児童生徒のそばにいるようにしたい。
児童生徒は毎日変化するものでもあり、同じ指導をしても、同じ態度が返ってくるとは限らない。そういうことを体験的に知るのが大事なのである。
児童生徒との関わり方で重要なポイントは次の2点。
(1)長所を見るようにして、肯定的に捉える
いろいろな児童生徒がいて、初印象が良くない子どももいることだろう。教師の前でわざとふざけたり、言うことを聞かなかったりする子どももいる。教師としては、児童生徒を肯定的に見るようにして、長所を的確に把握してもらいたい。教師の肯定的に見る姿勢が児童生徒に伝われば、教師を信頼するようになる。
(2)全員に積極的な関心を示す
教室には30~40人程度の児童生徒がいる。元気な子、積極的に発言する子だけではなく、おとなしい子や、気が弱く発言できないなど目立たない子もいる。体が弱い子もいるかもしれない。教師として、児童生徒一人一人に積極的な関心を示したい。個々の児童生徒に関心を示すことが児童生徒が生きる学級経営につながる。
児童生徒の名前をできるだけ覚えることが大事。「〇〇くん、一緒にやろう」「△△さん、どうもありがとう」と名前を呼びながら声を掛けることが、児童生徒に近づく第一歩だ。
授業中だけではなく、朝や帰りの活動、給食、清掃、部活動なども一緒に過ごし、できれば一緒に遊ぶことを心掛ける。授業中では見ることのできない児童生徒の姿を観察して、今後の指導や教採試験の面接などに役立てたい。
また、児童生徒理解というが、教師としての自分を理解してもらうことも大事だ。休み時間などに語らう中で、自分の趣味などを話してもいいだろう。遊びに夢中になる飾らない姿を見せてもいい。短い実習期間でも、児童生徒との人間関係を築きたいものである。
児童生徒の触れ合いからは、本当に多くのことが学べるはずである。
実習生には、1人につき1人の指導教官が必ずつく。実習期間中はほとんどこの指導教官と過ごすことになる。教科指導の基本的事項の指導、指導案の点検、授業後のアドバイスなどが指導教官の役割。分からないことや意見を聞きたいことがあったら遠慮せずに聞いてよい。発問の仕方、教材研究のやり方など教えてもらうのもいいだろう。ただし、指導教官にとっては、本来の職務に加えてやってくれていることなので、感謝の気持ちを持つことが何よりも大切だ。