近年、先生方から「前触れなく、意外な子が学校に来られなくなってしまう」という声を耳にすることが増えました。その背景には、コロナ禍の影響が少なからずあるのではないかと私は考えています。
こうした子どもたちを取り巻く環境において非常に重要になるのが、子どもたち自身が自らの気持ちや感情に気付く力を持つことです。そこに気付ければ、「あの人に話してみよう」「少しだけ休憩しよう」と、心が折れてしまう前に適切な対処をすることができます。
気持ちに気付くことは、SELの出発点です。気付くからこそ、心との付き合い方を実践していくことができます。「気付く」際に重要になるのが、「ノンジャッジメンタル」です。これは判断をいったん横に置いて感情をありのままに受け入れることを意味します。
一般的には、「悲しみ」や「苦しみ」はネガティブな感情で、「うれしさ」や「楽しさ」はポジティブな感情と捉えられがちでしょう。そのため、ネガティブな感情にはふたをして、自分にも他者にも見せないようにしようとする大人も少なくないように思います。こうした判断(ジャッジ)を脇に置いて、ありのままの感情を受け止める姿勢がノンジャッジメンタルです。
本来、感情にネガティブもポジティブもありません。それにふたをしたところで、その感情はなくなりません。むしろ、見ないようにして気持ちがこじれることの方がずっと多いのではないでしょうか。
そこで、「気付く」ことへの理解を深める「カウントアップ・カウントダウン」という簡単なワークをご紹介します。
このワークを講演や研修などで行うと、多くの人は無意識に「数に関すること以外は言ってはいけない」と思い、数を数えることにまつわるコメントをしてくださいます。これが「ジャッジが働いている」という状態です。
本来は、「お腹が空いたと感じていた」「退屈だなと思っていました」といったことが出てきても構わないはずで、否定も肯定もせず、自分の感情・気持ちを受け入れるのがノンジャッジメンタルなのです。
加えて、このノンジャッジメンタルな姿勢は子ども(相手)の話を聞く際にも非常に有効です。決め付けず、「どんなことを感じたの?」「その時にどう思った?」と話を聞いていく。こちらがノンジャッジメンタルに話を聞けば、背景を伝えてくれやすくなります。
自分の気持ちも相手の気持ちもノンジャッジメンタルな姿勢で気付くことで、適切なアクションにつなげていくことができるのです。