第2回 食べることって本当にみんなにとって楽しいこと?

第2回 食べることって本当にみんなにとって楽しいこと?
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 「子どもの頃に給食が不安だった人はいますか?」

 先生向けの研修会でそう聞くと、常に1~2割の方の手が挙がります。

 実は私自身も、子どもの頃は給食に不安な気持ちがありました。当時、私が通っていた小学校には「居残り給食」がありました。早生まれで体も小さかった私は、時間内に給食を食べ切れないことが多く、掃除の準備で皆が机を後ろに下げる中、食事を続けていました。それでも食べられず、給食室に「ごめんなさい」と返却しに行ったことも何度もありました。

 だからいつも登校前は、冷蔵庫に貼っていた献立表を見て、「今日はちゃんと食べられるかも」「今日は苦手なやつが多いなぁ」などと、一喜一憂しながら学校に通っていたのです。

 一方で、「今、給食が好きな子」や「子どもの頃に給食が好きだった先生」からすると、なかなか給食が「嫌」「苦手」という子の気持ちは想像できないかもしれません。

 私は給食が苦手でしたが、運動は好きでした。かつては甲子園を目指した高校球児でもあります。だから体育の時間は楽しみな時間の一つで、球技スポーツなどは大好物でした。当時の私からすれば、体育が「嫌い」、運動が「苦手」という子の気持ちは想像できませんでした。

 でも、体育における球技というのは非常に残酷なものです。運動が得意な子と一緒にチームを組まされて、うまくできないと「ちゃんとやれよ」と言われることだってあります。

 当然、苦手な子も「ちゃんとやれ」と言われてできるのなら、最初からやっています。強い言葉で叱責(しっせき)されても、できないものはできません。そんな経験をすると、ますます運動が嫌いになったり、場合によっては自分自身を責めてしまったりすることもあるかもしれません。

 運動が苦手な子を少しでも好きにさせるためには、その子に合わせたステップアップ方法を考えて指導する必要があります。キャッチボールができない子に、試合でピッチャーをやらせることが効果的な練習ではないのは明らかです。

 給食が食べられない子についても同様のことが言えます。「しっかり食べないと」「残さず食べなさい」というのは、そもそも「指導」ではありません。大人側の「主張」です。本来、「指導」というのは目標や目的に向けて、教え導いていくことのはずです。

 「楽しく食べられるように」「子どもの食を広げる」という目標を立てることは大切だと思いますが、そのためには給食が食べられない子や苦手意識がある子について、よく知る必要があります。次回は、事例を挙げながら理解を深めていきましょう。

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