第3回 知っておきたい!不適切な指導と「会食恐怖症」

第3回 知っておきたい!不適切な指導と「会食恐怖症」
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 2023年度に大阪市の公立小学校でとある女性教諭が「4年生の児童2人に、残っていたご飯をみそ汁が入ったおわんに入れて食べさせたり、食べ物をスプーンで口の前に持っていったりして、肉体的な負担や精神的な苦痛を与えた」として、減給処分を受けたという報道がありました。

 この女性教諭は調査に対して「無理に食べさせようとはしていない」と説明したとのことですが、近年はこのような「無理に食べさせる」という指導への世の中の見方は厳しくなっており、見直しが進んでいるところです。

 関連する話として「会食恐怖症」というものをご存じでしょうか。これは「人と食事をするときに、身体症状が出るほどの健全ではない不安に襲われる」という病気で、不安障害の一種とされています。

 私は17年ごろから、会食恐怖症の当事者支援の活動をしてきました。その中で、当事者向けの調査では「会食恐怖症の一番のきっかけとなったことを教えてください」という設問に対して、一番多かったのが「完食指導や食事の強要」という回答でした。

 当時を振り返る具体的なエピソードとしては「給食を残させてもらえず、クラスメートが教室の掃除をしている中で自分だけに居残りさせられ、掃除の邪魔なのに食べられないという気持ちで焦りとても嫌だった。(神奈川県・30代女性)」「小学校時代に出された物は必ず残さず食べなければいけないという指導の重圧から、昼の掃除時間中も残って食べて埃まみれになった記憶がある。(滋賀県・40代男性)」などが挙げられています。

 これらのエピソードを語ってくれた方々は、大人になった今でも、人と食事をすることに対して大きな不安に襲われています。子どもの頃の給食指導は生涯にわたり、大きな影響を及ぼすことがあるのです。

 現在はこのような指導に対する世間の目が厳しくなっていますが、そもそも子どもが先生に対し「食べられない」と率直に言える雰囲気がクラスにあることがとても大切です。10年以上前の調査ではありますが、とある小学5・6年生向けに行なった調査では「体調が悪いときに学校給食をどうしますか?」という設問に対して「がんばって全部食べる」と回答した児童が約9割に上ったそうです。これまで育ってきた環境などの問題もあるので、「先生が悪い」という話ではありませんが、子どもが「食べられない」と率直に言えないのは、非常に恐ろしいことです。

 一方で、何も知らないと「食べない」ということに対して、わがままなのではないかと見なしてしまうこともあります。その意味でも理解を深める必要があり、次回は「子どもが給食を食べられない4つの理由」をお伝えします。

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