LGBTQの中高生の9割が学校で困難経験 自殺リスクも高く

LGBTQの中高生の9割が学校で困難経験 自殺リスクも高く
iStock.com/chachamal
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 10代のLGBTQ当事者の自殺リスクが高いことが6月2日、LGBTQへの支援や理解を啓発する教育などに取り組むNPO「ReBit」の全国調査で明らかとなった。LGBTQの中高生の9割が1年間に学校で困難やハラスメントを経験しており、そうした経験があると自殺リスクが高まる傾向にあった。

 調査は、12~34歳のLGBTQの当事者を対象に、今年2月10日~3月31日にかけてインターネットで実施。4733人の回答を分析した。LGBTQの子ども・若者を対象にしたこの調査は2022年以来2回目となる。

 10代のLGBTQ当事者のうち、この1年に自殺念慮を経験した(自殺を考えた)のは53.9%、自殺未遂(自殺をしようとした)は19.6%、自傷行為(わざと自分を傷つけた)は42.2%だった。前回調査と比べると、自殺念慮は5.8ポイント、自殺未遂は5.6ポイント、自傷行為は4.1ポイント高かった。

 日本財団が21年に行った「第4回自殺意識調査」と比較すると、10代のLGBTQ当事者の自殺念慮は10代全体の3.3倍、自殺未遂は3.6倍、自傷行為は3.7倍といずれも高かった。

 10代のLGBTQ当事者の40.8%がセクシュアリティーについて安心して相談できる人・場所がないと答えており、相談できる人や場所がある方が、自殺リスクは低くなる傾向にあった。

 調査では、学校生活に関することも尋ねた。

 LGBTQの中高生の89.5%が、この1年に学校で困難・ハラスメントを経験していた。教職員から困難・ハラスメントを経験したLGBTQの中高生は63.8%に上った。学校で困難やハラスメントを経験している群は、そうでない群よりも自殺念慮では17.1ポイント、自殺未遂では11.8ポイント、自傷行為では14.3ポイント高くなっていた(=グラフ)。

【グラフ】学校での困難と、自殺・自傷の関係性
【グラフ】学校での困難と、自殺・自傷の関係性

 具体的な困りごとを複数回答で聞いたところ、教職員からで多かったのは「不要な男女分け」(46.2%)や「自分や他の人がLGBTQでないと決めつけた言動」(30.1%)、「性別でふさわしい行動の決めつけ」(28.7%)などがあり、他の生徒からのものでは「自分や他の人がLGBTQでないと決めつけた言動」(63.7%)や「LGBTQをネタ・笑いものに」(43.9%)、「性別でふさわしい行動の決めつけ」(34.4%)などがあった。

 加えて環境要因では「教材や授業などでLGBTQを想定していない」(33.7%)や「制服や校則が性別で分かれている」(27.2%)、「提出物やテストなどの男女欄」(25.2%)などが挙がった。

 また、この1年でいじめや暴力を経験したLGBTQ当事者は、中学生では40.1%、高校生では24.0%に上った。不登校経験があったのは、中学生で23.6%、高校生で10.2%だった。

 中学生で、小学校の体育の授業の中で「思春期になると異性への関心が芽生えることを学んだ」のは84.2%だったのに対し、「性的指向の多様性について学んだ」のは26.3%、「性自認の多様性について学んだ」のは24.1%にとどまった。

 大学生などを含め、1年間で学校の授業でLGBTQについて教わったと答えたのは59.2%で、前回よりも19.0ポイント増加したものの、その授業の中で教職員から差別的・否定的または誤った発言があったと答えていたのは30.1%、情報が不十分だったと答えたのは42.2%を占めた。

 ReBitの藥師実芳代表理事は「23年にLGBT理解増進法が成立し、学校においてもLGBTQへの理解の促進や安全な学習環境の確保、相談体制の構築が努力義務として求められているものの、今回の調査からは、そうした取り組みが現場でまだ十分に実現されていない実態が明らかになった」と指摘。さらに、「法成立前の調査と比べても、自殺念慮や学校での困難の割合は下がっておらず、当事者の生きづらさは依然として深刻だ。法律の趣旨に沿った具体的な取り組みを進める必要がある」と強調した。

 その上で「教員養成課程や現職教員向けの研修で、LGBTQに関する基礎知識や支援のあり方を学ぶ機会を整備することが不可欠だ。次期学習指導要領でも、これらの内容を充実していってほしい」と話す。

 

【キーワード】

LGBTQ 性は、生物学的な性だけでなく、性自認や性的指向など、多様な要素からなっている。LGBTQは性的マイノリティーの総称の一つ。2023年には、性的マイノリティーの人々への理解を深め、差別や偏見をなくすことを目的とした「LGBT理解増進法」が成立した。

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