児童生徒の自殺が過去最多に上る中、文部科学省はこのほど、自殺の未然防止に向けて医療機関との連携強化などに向けたガイドラインを新たに作成する方針を決め、来年度予算の概算要求に盛り込んだ。同省は2009年度に「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」マニュアルを作成しているが、子どもの自殺の増加傾向が続いていることに加えて、SNSなどを巡る新たな課題への対応が求められるとして、内容を見直すとともに、教職員向けに研修動画も作成して学校現場での普及に取り組むことにしている。
厚労省などによると、昨年1年間の自殺者数は全体では減っている一方、小中高生は529人に上り、前年より16人増えて過去最多を更新した。内訳は小学生が15人、中学生が163人、高校生が351人で、いずれの年代も前年より増えている。
こうした状況を踏まえて、文科省は来年度に自殺予防に向けたガイドラインを新たに作成する方針を決めた。児童の自殺予防を巡っては、06年に成立した自殺対策基本法の趣旨を踏まえて有識者会議を設置し、09年に「教師が知っておきたい子どもの自殺予防のマニュアル」が作成されている。
この中では、中学・高校教師の5人に1人は生徒の自殺に、3人に1人は自殺未遂に遭遇したことがあるという調査結果があるとして、自殺予防に関して知っておくべき基礎知識を中心に記載。特に自殺のほのめかしや自傷行為、行動や身なりの突然の変化など自殺直前に見られがちなサインに注意を払うことや、対応の留意点として一人で抱え込まずチームで対応することなどを求めている。
一方で、マニュアル作成から15年以上を経て、SNSで「死にたい」とほのめかしたり、いじめ事案が生じたりといった状況や、若年者の市販薬のオーバードーズ(過剰摂取)などが社会問題化しており、特に医療機関との連携などを中心にマニュアルを見直すべきとの声が、文科省の有識者会議「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」の委員などから上がっていたという。
同省は有識者会議で早ければ来年初めごろから議論を始め、夏ごろをめどに新たなガイドラインを作成したいとしている。教職員向けにガイドラインの内容を解説する研修動画も作成し、学校現場への普及を図る。
同省児童生徒課は「有識者会議には医療の専門家も入っているので、子どもの自殺がこれほど増えている背景を踏まえて、学校だけで抱え込まず医療機関などと連携した対応の進め方など、踏み込んだ内容にしたい」と話している。