日本の教員の給与水準は経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均を下回り、教員不足にも影響している――。そうした実態が9月9日、OECDが公表した報告書で明らかになった。公表に先立ち行われた記者会見で、OECDのアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は、給与水準の上昇は教員不足の解決策になると指摘。その上で「教職が知的好奇心を刺激される、やりがいのある仕事であることが重要だ」と述べた。
報告書はOECDが毎年公表している「図表でみる教育」。2025年版では高等教育を焦点にしながら、教育投資と格差、教員を取り巻く課題などについて、各国のデータに基づき比較・分析した。
それによれば、24年の教員の年間給与は初等教育の場合、 日本では3万4863米ドル~6万6530米ドル(1ドル=146円で換算の場合、508万9998円 ~971万3380円)の範囲となり、OECD平均の4万4153米ドル~7万4896米ドル(同644万6338円 ~1093万4816円 )を下回っていた。
また日本をはじめ、多くの国で教員不足に直面していることにも言及。教員定数に対し不足している状況を表した「未充足教員」の割合は、OECD加盟国のうちデータの入手可能な14カ国で1.6%である一方、日本では0.2%にとどまった。
報告書では「高い給与は教職をより魅力的にする可能性がある」と指摘。教員不足の解決策として、シュライヒャー局長も教員の給与水準の向上を挙げると同時に、「教育という仕事には知的好奇心を刺激され、多業種とのコラボレーションもできる、やりがいのある職業であることが求められる」と説明。フィンランドでは低い給与水準でありながら、やりがいを求め教職への応募が絶えない状況にあると語った。
授業時間については初等教育(小学校)で年間768時間、前期中等教育(中学校)で同884時間となり、OECD平均の初等教育804時間、前期中等教育909時間をいずれも下回った。
他国に比べ授業数が比較的少ない理由について、シュライヒャー局長は「教員が授業以外の活動も行い、責任を負っているため」と説明。ただ、授業以外の活動を通して児童生徒と関わることは「子どもと教員の関係性を深め、学びの質や学習成果も上がるなどの利点になっている」と分析。
さらに日本の学級規模について触れ、23年の小学校の平均が26.7人と、OECD平均の20.6人に比べ比較的大規模でありながら、PISAでは好成績を収めているとして、「非常に効率のいい教育」と評価した。