第5回 偏食な子の保護者に言ってはいけないこと

第5回 偏食な子の保護者に言ってはいけないこと
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 以前、小学校の先生からこんな話を聞いたことがあります。

 「うちのクラスに、ものすごく偏食な子がいます。あまりにも給食を食べないので、家で何を食べているか聞いてみたら、家に帰るとすぐにお母さんが冷凍餃子をたくさん出してくれるのだそうです。お母さんに、こちらから何か伝えた方がよいでしょうか」

 確かに、この状況が変わらなければ給食はなかなか食べてくれないでしょう。これは前回紹介した「子どもが食べない4つの観点」の「リズムの問題」によるものです。子ども目線では「給食を食べなくても、家に帰ったら好きなだけ餃子を食べられるから、それでいいや」となってしまうわけです。

 しかし、ここで保護者対応を間違えることがよくあります。もちろん、「偏食改善のことだけ」を考えたら、餃子を食べる量を減らすことは大切ですし、できれば餃子を食べさせること自体を控えてもらった方がよいでしょう。そのため、保護者にそのように進言すべきと考えるかもしれませんが、それだとうまくいきません。

 なぜなら、その子の偏食のことを長年考え、深く悩んでいるのは先生よりも保護者側だからです。そして、いろいろなことをやっても食べてくれず、栄養が心配な気持ちから「苦肉の策」として、「せめて、好きなものだけでも食べてほしい」と、(先ほどの場合だと)餃子を与えていることが多いのです。

 そういう状況を理解せずに、仮に正しいことを言ったとしても、保護者には全く響かないことが多いと思われます。むしろ、「これまでの私の苦労を何も分かっていない」と、コミュニケーションを拒絶されることすらあります。

 また、偏食な子に対する世間の目は優しくありません。場合によっては「お母さんやお父さんのせいなのでは」と言われることもあります。その度に、保護者は傷ついてきたのです。私は、保護者から子どもの偏食について相談を受けることがこれまで多くありましたが、相談中に涙を流すほど悩まれている方が数多くいました。

 確かに給食を作る側の目線に立ったとき、毎回のように残されてしまうのは、とても悲しいことです。しかし、偏食な子の保護者は、毎日3回、悩んできたかもしれません。大切なのはそのつらさを想像し、理解しようとすることです。そのつらさが理解されていると保護者が感じれば、「もしかしたら、餃子が給食を食べない原因の一つになっているかもしれません。少しだけ減らしてみませんか」というアドバイスも、生きるようになるのです。

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