【教採キーワード―調べ確認してみよう(29)】合理的配慮

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 障害者差別解消法が施行され、障害を理由とする差別を禁止するとともに、障害者にとっての社会的障壁を除去するために合理的配慮を提供することが明確にされた。今回は合理的配慮の意味やその進め方などについて、関係資料を確認してみたい。

障害者差別解消法

 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(2013年)では、第2条で障害者および社会的障壁の意義について、次のように定めている。「障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう」。ここで重要なことは、障害を個人の心身の機能と社会的障壁との相互作用によってもたらされると捉えていることである(「障害の社会モデル」)。

 次に社会的障壁については、次のように定めている。「障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう」。このような障害の捉え方に基づくと、社会的障壁を取り除くことは社会に課せられた責務ということになる。

 これらのことを前提に、第7条では障害を理由とする差別を禁止している。「行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。」「行政機関等」には公立学校が含まれる。

合理的配慮

 続いて第7条2項では、「行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない」と定めている。ここでは、障害者から社会的障壁除去の意思の表明があった場合、負担が加重でないとき、障害の状態に応じて、社会的障壁の除去について合理的配慮をしなければならないとしている。

 学校教育の現場における対応については、「文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針について(通知)」(24年1月)を参照していただきたい。初等中等教育段階における合理的配慮に関する留意点として、設置者・学校および本人・保護者による合意形成を図り、その内容を個別の教育支援計画に明記すること、合理的配慮の内容は状況を勘案しながら柔軟に見直しができるようにすることなどを挙げている。また、この通知に添付された「対応指針」には合理的配慮の例が示されている。例えば、意思疎通に困難がある場合には、絵や写真カード、コミュニケーションボード、ICT機器などを工夫すること、視覚障害者に対してスクリーンなどがよく見えるように前の席を確保すること、試験において、本人・保護者の希望や障害の状況を踏まえ、別室での受験、試験時間の延長、点字や拡大文字、音声読み上げ機能の使用などの対応をすることなどである。国立特別支援教育総合研究所の「インクルーシブ教育システム構築支援データベース」においても合理的配慮の実践事例のデータベースが提供されている。

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