私が勤務している自治体では、2019年に教員用の端末としてSurface Goが導入されました。翌20年には新型コロナウイルスの感染が拡大し、3月半ばから臨時休校になり、端末の導入は結果的に「まずは先生たちからタブレット端末を使えるようになってもらおう」という試みとなりました。
臨時休校に伴い、Microsoft TeamsやGoogle for Education、ロイロノート・スクールなどのサービスの整備が進みました。また、本県独自の試みとして、スタディサプリのアカウントも付与されました。
この時期には、すでに生徒一人一人がタブレット端末を活用している学校の事例を目にする機会が多くありました。「学びを止めない」という言葉もよく耳にしましたが、当時の勤務校ではこうした動きは全く見られませんでした。主任の先生方は休校明けの変則的な行事日程を考えることで手いっぱいの様子で、自宅にいる生徒に対しては適度に課題を課すだけで、オンライン授業の機会は置き去りにされていました。
実は当時の学校文化では、オンライン授業などは「あってはならないこと」でした。もし仮にオンライン授業を実施するとなれば、全ての先生方が実施する必要があり、ICTに不慣れな先生が多い中で一人が勝手に始めたら、身勝手な人だと後ろ指を指される状況だったのです。仕事のやり方は、「できない人に合わせる」のが当時の公立高校の考え方でした。新しい試みは一切許されませんでした。
臨時休校中に唯一実施できたのは、Zoomを活用した朝の健康観察でした。ただし、これも生徒の肖像権に配慮した形で進められ、クラス全員が一度に参加することは許されませんでした。出席番号1番の生徒から順にZoomへの入室を許可していき、一言二言会話をして退出するという作業を繰り返しました。最後の生徒は入室待機画面のまま1時間ほど待たされるという、今から考えれば実に非効率的な運用でした。
20年5月からは分散登校が始まりました。自宅で待機している生徒とやりとりする際に活躍したのは、もちろん生徒が所有しているスマホです。コロナ禍という非常事態に、「使えるものはなんでも使う」という考え方で、かなり重宝しました。