学習指導要領の前文では、「社会に開かれた教育課程の実現」の重要性を指摘し、そのためには学校と社会の連携と協働が必要とした。また、生徒指導提要においては、「チーム学校による生徒指導体制」の意義を明示している。
チームとしての学校の在り方を提言したのは、中教審答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」(2015年12月)である。答申では、チームとしての学校が求められる背景として、次の3点を挙げている。
(1)「社会に開かれた教育課程」を実現するためには、学校の組織や文化の在り方を見直し、コミュニティ・スクールなどの仕組みの活用や、多様な専門性や経験を持つ地域人材などとの連携・協働、また家庭や地域社会との連携により、教育活動を充実していくことを必要としていることである。学校での学習が、児童生徒自身の生活や社会の課題解決につながるように改善していくためには、教育内容や方法を不断に見直すと同時に、外部の資源も活用しながらマネジメントしていくことが大切である。
(2)学校が抱える課題の複雑化、困難化への対応である。地域社会のつながりの希薄化、情報環境の急速な変化、特別支援教育の充実、いじめや不登校の児童生徒の増加、子どもの貧困や児童虐待などの課題に適切に対応していくためには、専門的人材を含めた関係者が連携した体制が求められる。
(3)子どもと向き合う時間の確保のための体制整備の必要である。教員の業務内容の広がりや時間の延長が課題となる中、心理や福祉などの専門家が教育活動や学校運営に参画し、連携・分担しながら校務を担う体制を整備することが求められている。
「チームとしての学校」像について、答申では次のように整理している。「校長のリーダーシップの下、カリキュラム、日々の教育活動、学校の資源が一体的にマネジメントされ、教職員や学校内の多様な人材が、それぞれの専門性を生かして能力を発揮し、子供たちに必要な資質・能力を確実に身に付けさせることができる学校」
このような学校を実現するための視点として次の3点を挙げている。
(1)専門性に基づくチームとしての体制の構築である。教員がそれぞれの専門性を生かしながら、心理や福祉などの専門スタッフを学校の教育活動の中に位置付け、教員との間での連携・分担の在り方を整備する。
(2)学校の課題が複雑化・多様化することに伴って、学校が管理しなければならない範囲も複雑化・多様化している。このような状況に対応するためには、校長のリーダーシップとともに学校のマネジメント体制を強化することが必要としている。中堅教員についても、学校運営に関する意識と能力を高める機会を充実していく。
(3)人材の育成や業務の改善を推進することである。教員については、研修や教員評価の機会を生かし、変化に対応できるための知識と技能の刷新を進めるようにする。また、教員の専門性を発揮し、チームとして教育力を発揮できるよう、業務の改善を進める。
いずれにしても、これからの学校は、教員一人一人の指導力を高めることを中核にしながらも、子どもたちの成長に関わるさまざまなセクターが連携して課題解決に当たる姿へと変化していくことが推測される。