第7回 ワークルール教育は教員の業務を増やす?

第7回 ワークルール教育は教員の業務を増やす?
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 前回は、学校でワークルール教育を行うことが「教員の新たな業務を増やすのではないか」という視点を指摘して終わった。教員の業務削減が叫ばれる中で、働き方改革に逆行するというのは重要な指摘だ。

 確かに、雇用と労働に関する教育は学習指導要領に含まれており、公民科などで指導がなされ、業務負担増加はないとも考えられる。しかし、筆者がこの連載で強調する、労働法の知識付与を超えてあらがう力を付与する、権利行使の意味を伝えるワークルール教育までは、学習指導要領で予定されないだろう。だから筆者は、ワークルール教育を行うことが教員の業務を増やす側面があることは、否定できないと率直に受け止めている。とはいえ、それでもなお学校でワークルール教育を実施すべきというのが筆者の回答だ。

 1つ目の理由は、外部講師の派遣制度を活用し、ある程度現場の負担を軽減して実施することが可能だからだ。筆者が所属する日本労働弁護団は、全国の学校に弁護士による出前授業の講師派遣を行うだけでなく、無料で活用できる指導案なども公開している。各地の弁護士会や自治体でも講師派遣を実施している所があるし、厚労省も過労死等防止対策など労働条件に関する啓発事業として、労働問題や労働条件の改善などについて理解を深めてもらえるよう講師派遣を行っている。これらの制度を活用することで、教員が新たに教材作成から始めるような負担は抑えられる。

日本労働弁護団・ホームページより
日本労働弁護団・ホームページより

 2つ目の理由は、教員の業務負担を加味しても、それを乗り越える価値がワークルール教育にはあるからだ。とはいえ、その価値を「子どもたちのため」とし、教員に授業の負担を押し付けることは是としない。

 ワークルール教育に関わること(授業見学なども含む)は、教員が自身の働き方を見つめ直す契機、学びの機会にもなる。欲を言えば、教員が自らの職場の問題にも向き合う実践者であれば、子どもたちにとってもより意味のあるワークルール教育の実践の担い手になるだろう。たとえ現状は、その教員が自身の職場の不合理にあらがえず、受け入れるしかない立場でも、その要因(管理職との格差、同調圧力や自己責任論など職場風土)に真摯(しんし)に向き合っている先輩労働者(教員)の言葉であれば、子どもたちには身近な大人の深い重みがあるものとなる。

 正しいワークルール教育は、教員自身の学びの場、働き方をも変える契機になるはずで、それに伴い増えた業務以上に、教員が現場から声を上げて無駄な業務削減を勝ち取る力を生むはずだ。

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